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【公演評】宙組『夢千鳥』 優しくて自分勝手な芸術家・竹久夢二

したたる色気で魅せた和希そらの男役道

さかせがわ猫丸 フリーライター


 宙組公演 大正浪漫抒情劇『夢千鳥』が、宝塚バウホールで上演されました。

 主演の和希そらさんは、これがバウホールでの主演2作目。大正時代を代表する画家・竹久夢二と、彼を描く映画監督・白澤優二郎の2役で、歌・ダンス・演技の実力をあますところなく発揮しました。

 大正浪漫香る舞台で描く男と女の愛憎劇は、詩情豊かでかつドラマチック。ヒロインの天彩峰里さんも、これまでのイメージを覆す大人の女を、色香たっぷりに演じています。

 新型コロナウイルス感染症予防に伴う緊急事態宣言により、千秋楽を待たずして公演は中止となってしまいましたが、無観客で収録した公演の映像をディレイ配信するとのこと。したたるような色気を魅せた和希さんの男役道と、演出家・栗田優香さんの鮮烈なデビューは、わずかな公演数でも、強烈な印象を残しています。(以下、ネタバレあります)

むせかえる和希の色気

 長身スターが多い宙組の中、和希さんは小柄な方ですが、その躍動感はどこにいても目を引きます。歌にもダンスにも秀逸で、『WEST SIDE STORY』や『アナスタシア』ではコケティッシュな女役に変身するなど、演技の振り幅が大きいのも魅力でしょう。若々しく、今どきアイドルなイメージのある和希さんですが、今公演ではガラリと雰囲気を変え、むせかえるような男役の色気を解禁し、新たな一面を見せました。

 和希さんが演じる2役は、どちらも夢を追う芸術家でプレイボーイ。日本を代表する映画監督・白澤優二郎は、女優の赤羽礼奈(天彩峰里)と内縁関係があっても、新作を撮るたびに主演女優と浮名を流します。そんな白澤が次回作で描く竹久夢二もまた、他万喜(天彩/2役)がそばにいながら女性とのスキャンダルが絶えない男でした。

 物語は夢二の時代を軸に、監督の時代といったりきたりしますが、和希さんはどちらの役にも自然に溶け込み、役が重なり合って行くのも見どころです。

――大正三年。夢二がデザインした小間物を売る港屋絵草紙店は繁盛していたが、大衆画家としてしか評価されない現実に、夢二はいらだっていた。離縁しても同居し、店を手伝う他万喜とはいさかいが絶えず、色街に通うばかりで、売り切れの作品に手をつけようともしない。

 竹久夢二といえば誰もが知る美人画家。色白で繊細な女性の画風から、どんな優男かと想像しますが、実際は男のサガを凝縮したような一面があったようです。この作品に描かれる夢二も、自分勝手で女に暴力も辞さない残酷さと、捨てられた子犬のような気弱さが同居するという “とんでもなく危険で魅力的な男”。画壇に認められない、他万喜への愛をコントロールできない……コンプレックスや嫉妬にとらわれた夢二は、まさにザ・屈折破滅男。なのに憎めないし、むしろ女を引き付ける。そんな禁断の魅力を、和希さんは巧みに演じていました。着流し姿で片膝を立て、憂いを含んだ表情で杯を傾ける姿には、おそろしいほどの色気があふれかえっていて、こんなに大人っぽかったっけと、戸惑ってしまいそうなほど。

 また、和希さんらしいダンスの見せ場もしっかり用意されています。鍛えられたふくらはぎがのぞく着流し姿でのキレあるダンスや、絶望のソロダンスなど、ツボは外しません。

◆公演情報◆
『夢千鳥』 宝塚バウホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:栗田 優香

★ディレイ配信について
宝塚歌劇の動画配信サービス「タカラヅカ・オン・デマンド」にて配信。
・日時:5月8日(土)19:00配信開始
・販売期間:4月30日(金)17:00~5月8日(土)18:30
※詳細はこちら

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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