メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

熱海五郎一座に出演、紅ゆずるインタビュー/下

自分の人生を考えたのは初めて

中本千晶 演劇ジャーナリスト


紅ゆずるインタビュー/上

自分に似合うファッションを楽しむように

――もともとこの作品が上演されるはずだった時と今、大きく変わったことは何でしょう?

 世界も大きく変わりましたし、私自身、男役をやっていた時とは自分の感覚も変わったように思うんですよね。今、この時に幕を開ける意味もきっとあると思うので、今しか味わえない時間をお客様も一緒に体感していただきたいです。

――「私自身もすごく変わった」とのことですが、何が一番変わったと思われますか?

 そうですね…男役を20年弱やっていたので、辞めた直後は突然スカートを履いてと言われても「ええっ!」という感じだったんですよ。だけどやっぱり、当たり前ですけど本来女性なので、お買い物に行ったりするのが楽しいと思い始めたんです。

 今まではデパートでもメンズ館に行って男役としての服を探していたのが、今は「女性としての私に似合うものは何かな」とか「こういう服を着てみたいな」とか、本来の自分に近いものを着ることができる。そこからして全然違います。さらに「こういう服が似合う女性になりたいな」といったことも考えるようになりました。男役のときは全然しなかったネイルもするようになって、指先に色がついているだけで、「こんなにテンション上がるのか!」と驚いてみたり、今までにない感覚を楽しんでいます。

拡大紅ゆずる=岩田えり 撮影(ヘアメイク:hanjee(SINGO)、スタイリング:森本美砂子、衣装:ZADIG&VOLTAIRE)

――ということは、この1年間で自然な自分にゆっくり戻っていけたという感じですか?

 そうですね。宝塚にいたときは、公演が無事に終わった充実感を味わっている時間がないままに、すぐに次の公演のことに必死でした。「千穐楽終わりました。よし! 次の日仕事」みたいな感じで、達成感を味わっている暇もなかったんです。

――それほど忙しかった…。

 宝塚時代はその時のこと、次の作品のことしか考えていなかった。紅ゆずるでしかなかった。本名の自分と対話する時間は全くありませんでした。退団して初めて自分のDVDを見直して「私、こんなことやってたんだ」とか「確かこれ、ものすごい短期間しか稽古していないのに、よくやったな」とか、自分のタカラヅカでの道のりをようやく振り返ることができたんです。

 同時に、これからの自分の人生についても考えるようになりました。人生の最後に「本当に何の悔いもない。素晴らしい人生だった」と思うためには、私には何が必要で、どう生きてどう過ごしていったらいいのか、そんな風に自分の人生を考えたのは初めてのことでした。

◆公演情報◆
熱海五郎一座・新橋演舞場シリーズ第7弾‼
東京喜劇
『Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー 〜日米爆笑保障条約〜』
2021年5月30日(日)〜6月27日(日) 新橋演舞場
公式ホームページ

[スタッフ]
作:吉高寿男
出演・構成・演出:三宅裕司
[出演]
渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛、春風亭昇太
東貴博(交互出演)、深沢邦之(交互出演)
劇団スーパー・エキセントリック・シアター
【ゲスト】 紅ゆずる、横山由依(AKB48)
 
〈紅ゆずるプロフィル〉
 2002年、宝塚歌劇団に第88期生として入団し星組に配属される。2016年、星組トップスターに就任。2019年退団。2020年2月紅ゆずる1st CONCERT『紅-ing!!』を開催。2021年8月にはブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』の主演が決まっている。
公式ホームページ

・・・ログインして読む
(残り:約2417文字/本文:約3842文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『タカラヅカの解剖図館』(エクスナレッジ )、『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師。

中本千晶の記事

もっと見る