近くて違う日本の「語り芸」について【上】
2021年05月02日
ここにきて、三度目の緊急事態宣言発出です。
さて。またもや、イベント中止のお知らせが続々と。
心が、ざわつきます。
この一年は、いったいなんだったのだろう……。
えっと。気を替えます。
今日はすごく基本的なお話をしようかと思います。
「奈々福さんの講談は……」
今までに何度言われたことか。
そのたびに「あの、私、浪曲です……」と訂正する。
講談の方々にうかがうと、「そうそう、よく間違われます。浪曲と」。
講談のほうでも「◎◎さんの浪曲は……」と言われることがあるらしい。
落語・講談・浪曲。三大「話芸」と言われるらしいです。
一番、知られているのが、そりゃ、落語。
ところが。
先日驚きました。志の輔師匠のラジオ番組にゲスト出演させていただいたときに、師匠からうかがったこと。
今までに出演された1000人近いゲストのうち、落語をナマで聞いたことのある方は……。
「奈々福さん、おどろくべし、ヒトケタだよ」
驚愕。
ちょっとまて。志の輔師匠の番組に呼ばれたゲストで。
落語をナマで聞いたことあるひと……1000人中、ひ、と、け、た……。
浪曲の奈々福としては、今空前の演者数を誇る落語に比べて浪曲は~と言っていたのに、ひろく世間を見渡せば、落語でさえ聞いたことのない人が大半、なんですよね。
落語さえ知らない人に、講談と浪曲の区別つきますかなんて、「WHAT?」な話題かも。
とはいえ。
それでも広い世間の片隅かもしれないけれど、落語と講談と浪曲という、超ミニマムな芸が、融合もせずにそれぞれ独立していて、それがいま、東京で毎日のように聞けるし、毎日開かれている会の数はかなりにのぼっている……という状況は、厳然として、ある。
相当数のお客様が、「落語にしようか、講談にしようか、浪曲にしようか」と選びながら、楽しまれている現実が、ある。
コントや、漫才的なものや、スタンダップコメディは世界各国にあるけれど、そんなに、いくつも物語を「聞く」大衆芸能があるって、面白い状況じゃないかと思います。
いろいろ、違うんですよ。
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