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落語、講談は座って、浪曲は立って

近くて違う日本の「語り芸」について【上】

玉川奈々福 浪曲師

今日は基本のお話を

 ここにきて、三度目の緊急事態宣言発出です。

 さて。またもや、イベント中止のお知らせが続々と。

 心が、ざわつきます。

 この一年は、いったいなんだったのだろう……。

 えっと。気を替えます。

 今日はすごく基本的なお話をしようかと思います。

玉川奈々福=森幸一撮影
 よく、取材してくださる方や、お客様からこう言われます。

 「奈々福さんの講談は……」

 今までに何度言われたことか。

 そのたびに「あの、私、浪曲です……」と訂正する。

 講談の方々にうかがうと、「そうそう、よく間違われます。浪曲と」。

 講談のほうでも「◎◎さんの浪曲は……」と言われることがあるらしい。

 落語・講談・浪曲。三大「話芸」と言われるらしいです。

 一番、知られているのが、そりゃ、落語。

 ところが。

 先日驚きました。志の輔師匠のラジオ番組にゲスト出演させていただいたときに、師匠からうかがったこと。

 今までに出演された1000人近いゲストのうち、落語をナマで聞いたことのある方は……。

 「奈々福さん、おどろくべし、ヒトケタだよ」

 驚愕。

 ちょっとまて。志の輔師匠の番組に呼ばれたゲストで。

 落語をナマで聞いたことあるひと……1000人中、ひ、と、け、た……。

 浪曲の奈々福としては、今空前の演者数を誇る落語に比べて浪曲は~と言っていたのに、ひろく世間を見渡せば、落語でさえ聞いたことのない人が大半、なんですよね。
落語さえ知らない人に、講談と浪曲の区別つきますかなんて、「WHAT?」な話題かも。

落語、講談、浪曲、何が違う?

 とはいえ。

 それでも広い世間の片隅かもしれないけれど、落語と講談と浪曲という、超ミニマムな芸が、融合もせずにそれぞれ独立していて、それがいま、東京で毎日のように聞けるし、毎日開かれている会の数はかなりにのぼっている……という状況は、厳然として、ある。

 相当数のお客様が、「落語にしようか、講談にしようか、浪曲にしようか」と選びながら、楽しまれている現実が、ある。

 コントや、漫才的なものや、スタンダップコメディは世界各国にあるけれど、そんなに、いくつも物語を「聞く」大衆芸能があるって、面白い状況じゃないかと思います。

 いろいろ、違うんですよ。

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