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『大学教授、発達障害の子を育てる』の著者・岡嶋裕史氏に聞く(下)

「親としては、庇護を頑張るんではなくて、子どもの居場所探しを頑張りたい」

井上威朗 編集者

 新刊『大学教授、発達障害の子を育てる』(光文社新書)での赤裸々なカミングアウトが話題の岡嶋裕史・中央大学教授にインタビューしている企画です。

 我が子が発達障害であったとき、親の考えるべきこととは──。皆が気になるところを率直に尋ねてまいりました。

岡嶋裕史拡大『大学教授、発達障害の子を育てる』の著者、岡嶋裕史さん

岡嶋裕史(おかじま・ゆうし) 1972年、東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学経済学部准教授・情報科学センター所長を経て、中央大学国際情報学部教授(情報ネットワーク、情報セキュリティ)。『5G──大容量・低遅延・多接続のしくみ』『ブロックチェーン──相互不信が実現する新しいセキュリティ』(講談社ブルーバックス)、『ジオン軍の失敗 U.C.0079──機動戦士ガンダム ジオン軍事技術の系譜』(角川コミックス・エース)、『思考からの逃走』(日本経済新聞出版)など著書多数

「障害は個性だ」は強者の論理

『大学教授、発達障害の子を育てる』(光文社新書)拡大岡嶋裕史『大学教授、発達障害の子を育てる』(光文社新書)
──改めて、息子さんが発達障害であると診断されたときはいかがでしたか?

岡嶋 そうですね。診断が死刑宣告みたいに聞こえちゃう人もいると聞きます。私も「これは困ったぞ」と思いましたね。

──どこが困ったのですか?

岡嶋 もちろん、息子が将来どんな人生を歩めばいいのか、というのを考えると困りましたが、それ以上に「道しるべ」がないことに困りました。症状の出方は千差万別なこともあって、専門書を読んでもよくわからないんですよ。役に立ったのは先輩の親御さんが残したブログとかでした。だから自分も次の人の道しるべになるようなものを残せたらな、と思って本書を書きました。

──ですが、途中から岡嶋さんという人の発達障害児としての人生が描かれる本になってますよね。

岡嶋 スペクトラムの中で障害に近いところにいる人間にとっては、こんな感じで世界が見えてますよ、こんな感じで教室にいるってことを受け止めてますよ、という入り口のところでも紹介できれば役に立つかな、と思って。読んでいただいた方にはエッセイとして、このくらい気楽にやってもいいのか、ぐらいの気持ちで受け取ってもらえたら嬉しいです。

──発達障害の側からの世界の見え方を紹介しつつ、「幸せ」の感じ方も示されていましたね。

岡嶋 障害児を授かるのは人生で最大級の不幸、とか言われることがあります。そういう側面もあると思うんですけど、でも希望はある。その中でも楽しく暮らせるよ、みたいなメッセージが伝わるといいなと思ってます。

──障害を受容せよ、という逆の圧力もありますよね。親子ともに学びになるんだから前向きに受け止めなければならない、みたいな。そういうのはどう考えればいいんでしょうね。

岡嶋 否定はしづらいですよね。ですが、「障害は個性なんだから、卑下するな」という言い方も違うなと思っています。息子の場合はコミュニケーションにおいて障害がある。それは明らかにハンデであって、これをただの個性だから周囲の人間とイコールなものとして扱え、とか言われちゃうと、それは違う、と考えています。

──生まれつきコミュニケーション能力がある人のほうが、人生イージーモードに決まってますもんね。

岡嶋 そうですよ。こっちは最初からクソゲーをやらされているようなものなので。

──そのうえ、持たされたコントローラーのボタンが足りないとか。

岡嶋 そうそうそう。まさにそれです! 同じゲームをキーボードとゲームパッドでやるくらい違うと思うんです。

──イージーモードの学校生活を送った人が、「個性だ」と言っているのかもしれませんね。

岡嶋 そうですよ。逆にハードモード側の私は、自閉的なものを許容する業界っていうか、教員という職につけたので、そこは本当にありがたいことだと思っています。現在はさらにオンライン会議が主流になったので、もっと助かっています。

──回線や機材のせいにしておけば、こちらの映像を出さずサボれますものね。いろんなものに積極的に参加したくない当方としても、素晴らしい世界の到来です。

岡嶋 はい。これで原稿もはかどります。本当はゲームを先にやってますが。

──こうしてコミュ障にして優良著者への道が強化されるのですね。

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筆者

井上威朗

井上威朗(いのうえ・たけお) 編集者

1971年生まれ。講談社で漫画雑誌、Web雑誌、選書、ノンフィクション書籍、科学書などの編集を経て、現在は漫画配信サービスの編集長。