中学教科書『ともに学ぶ人間の歴史』の魅力
「子どもと学ぶ歴史教科書の会」山田麗子さんに聞く
菊地史彦 ケイズワーク代表取締役、東京経済大学大学院(コミュニケーション研究科)講師
歴史がざわめいている
中学生のための歴史教科書『ともに学ぶ人間の歴史』(学び舎発行、以下「学び舎教科書」)が面白い。どう面白いかというと、ページの中から“ざわめき”が聞こえてくる。もちろん優れた歴史書や歴史小説にはそんな臨場感が必ずあるものだが、教科書という制約の多い書物の中でこれを実現した例はあまりないように思える。

中学歴史教科書『ともに学ぶ人間の歴史』(学び舎)
「学び舎教科書」は2015年4月、検定に合格して世に出た。前年5月の検定申請から11カ月後、273件の「欠陥」指摘を乗り越えてのデビューだった。
「沖縄タイムス」や「朝日新聞」など、いくつかのメディアが好意的な紹介記事を載せた。近代史・近代思想史研究者の鹿野政直氏は、無名の庶民、女性や子どもなどマイノリティを積極的に採り上げたことを論評、ジャーナリストの池上彰氏は「思わずよみふけってしまう面白さ」と語った。実際に採用した中学校には、灘、麻布、筑波大学附属駒場などの有名校が含まれている。
「学び舎教科書」は2020年の検定にも合格した。基本的な内容構成は変わっていないが、個々の記述や図版は改善が施されている。公立中学校では教科書の寡占化が進み、新参が割って入るのは困難だが、「学び舎教科書」は上記のように国立・私立校では健闘し、歴史教科書のもうひとつのスタイルを確立しつつある。
このユニークな教科書に草創期からかかわってきた山田麗子さん(一般社団法人・子どもと学ぶ歴史教科書の会[略称:学ぶ会]副代表)にお話をうかがった。