「子どもと学ぶ歴史教科書の会」山田麗子さんに聞く
2021年05月10日
中学生のための歴史教科書『ともに学ぶ人間の歴史』(学び舎発行、以下「学び舎教科書」)が面白い。どう面白いかというと、ページの中から“ざわめき”が聞こえてくる。もちろん優れた歴史書や歴史小説にはそんな臨場感が必ずあるものだが、教科書という制約の多い書物の中でこれを実現した例はあまりないように思える。
「沖縄タイムス」や「朝日新聞」など、いくつかのメディアが好意的な紹介記事を載せた。近代史・近代思想史研究者の鹿野政直氏は、無名の庶民、女性や子どもなどマイノリティを積極的に採り上げたことを論評、ジャーナリストの池上彰氏は「思わずよみふけってしまう面白さ」と語った。実際に採用した中学校には、灘、麻布、筑波大学附属駒場などの有名校が含まれている。
「学び舎教科書」は2020年の検定にも合格した。基本的な内容構成は変わっていないが、個々の記述や図版は改善が施されている。公立中学校では教科書の寡占化が進み、新参が割って入るのは困難だが、「学び舎教科書」は上記のように国立・私立校では健闘し、歴史教科書のもうひとつのスタイルを確立しつつある。
このユニークな教科書に草創期からかかわってきた山田麗子さん(一般社団法人・子どもと学ぶ歴史教科書の会[略称:学ぶ会]副代表)にお話をうかがった。
山田さんはこんなふうに語る。
「女性史をもっと重視した教科書をつくりたいという想いはあったので、研究会に誘っていただいたのはうれしかった。80回も検討を重ね、充実した研究会でした」
「学び舎教科書」の大きな特徴は、教育現場の経験を持つ約30人の教師・元教師が内容の検討や原稿の執筆に携わっていることだ。彼らの教育実践をベースに、生徒たちが興味を持ち授業に参加したいと思うような教科書をつくっていった。だから、いわゆる「通史」とは異なる記述になったりする場合もある。
「構成段階でプロットはつくるものの、書き手は自分の実践をもとに書くから、流れが時系列通りにならないところも出てきます。ひとつの歴史観を通そうとしていないので、きれいにつながらない場合もある。でも、そこがこの教科書の特徴なんですよ」
アドバイザーの研究者から、この点で指摘を受けることもあったという。
「“団子”と“串”に例えていうと、確かに『通史』とか『歴史観』という“串”を重視する考え方はあると思います。ただ、
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