「つかこうへい芝居」を今に伝える映像
さて、1983年のNHKドラマ『かけおち'83』について、あれこれ書き連ねて来たが、僕の評価が高すぎることに鼻白む人は多いに違いない。(前回はこちら)
つかこうへいの映像化された作品の中、観るべきものはこれに尽きる、とまで言い切るのだから、他の作品に携わった方々なら、なおさらだろう。

つかこうへい=1986年撮影
それでも僕がこの『かけおち'83』にこだわるのは、1970年代から80年代の初めにかけて、ひとつの〝伝説〟となるブームを巻き起こし、演劇界を席巻した「つかこうへい芝居」とはいかなるものだったかを、かろうじて映像作品として今に伝えてくれるのが、この作品であるとの思いが、ここに来て、いっそう強くなっているからだ。
本連載で『かけおち'83』に触れた第1回に、春風亭昇太氏がこのドラマを紹介した2016年の番組によって、三十数年ぶりにその一部を観ることが出来たと書いた。
だが実は今、僕の手元には『かけおち'83』20分5話分の、完パケと呼ばれるオンエア用映像をダビングしたDVDがある。思いがけず手に入ったものだが、それに何度も目を通し、僕は一観客としても、また現在の仕事に身を置く人間としても、正直、その面白さに驚いた。そしてこの作品への、自分がどこか忘れてしまっていた評価に、今さらながら自信を持ったのだ。その上で、原稿に手をつけたわけである。
自分がメインの役どころで出演していることが自慢で、それを知ってもらいたいだけだろうと思われるかもしれない。いや、40年近く経っているのだ。そんな気持ちはさらさらない。あくまでも客観的な評価だと信じて、書き進めることにする。