2021年05月11日
大阪の新型コロナ感染拡大の勢いは凄まじく、吉村洋文大阪府知事の動向にはこれまで以上に注目が集まっている。よく指摘されるように吉村知事はテレビ出演が多い。表1は、2020年1月から今年4月までの吉村知事のテレビ出演回数である。これ以降も5月の連休中は「吉村知事生出演」を謳う番組が相次いだ。月によって多少のばらつきはあるが、ざっと平均すると毎月10本、週に2本にのぼる。
もっとも出演が多い読売テレビをはじめとして、どのチャンネルでも日中の情報番組は競うように吉村知事を番組に招き、コロナ感染対策に関わる主張および問題に対する釈明のために知事に長い時間を提供している。
スタジオの雰囲気は「知事おつかれさま」と吉村知事にあたたかく、コメンテーターたちは「庶民」の立場からの不安や疑問を発しながらも、知事の説明にうんうんとうなずき、最後は「吉村知事はええこと言わはる」「吉村さんはがんばっている」と彼への応援を口にする。
吉村知事が応援されている大阪で何が起きているか。大阪在住の筆者は、毎日のようにテレビや新聞、ネットから、厳しい状況を伝えるニュースを受け取っている。例えば、5月7日には、大阪府門真市の高齢者施設で61人が感染し、入院先が決まらないまま施設内ですでに13人の方が亡くなったことが報じられた(NHK NEWS WEB)。
そのような窮状にある高齢者施設は他にもある。さらに、高齢者のみならず、基礎疾患のない20~30歳代の重症者が急速に増加している。4月半ばからは連日700~1200人の新規感染者数が発表されている。
NHKが5月9日に公表した「都道府県別 直近1週間の人口10万人あたりの感染者数」では、大阪府は68.62人と、2位兵庫県51.70人、3位福岡県49.52人など他県を大きく引き離して、最大の感染者数を記録している。そんな中、重症病床の運用率は100%を超える事態が続いている。そのほかの緊急医療や予定されていた手術などに大きな影響を及ぼしていることは間違いない。
その状況を踏まえてテレビは、いかに大阪の医療が逼迫しているかについて、毎日かなりの時間を使って報道している。関西ローカル番組では大学病院をはじめとした医療現場にカメラが入り、生々しい現場の状況を伝えている。医療についての報道は必要かつ重要であるが、このようなニュースの「シャワー」は、「とにかく病気になってはいけない、事故にもあってはいけない」と思わせるに十分だ。
だが、こうした危機的な状況に直面してなお、吉村府政を厳しく否定する声はあまり聞こえてこないようだ。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください