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コロナ禍でもストップモーションは止まらない

 ストップモーションは昔から時間・場所・撮影機材などが確保出来れば、個人でも制作可能だ。今年同時多発的に完成・公開が続く話題作も、実は長い歳月の制作の結果生まれたものだ。

 昨年(2020年)、コロナ禍で国内の大多数のアニメーション作品の制作が遅延を余儀なくされたが、ストップモーション制作は止まらない。リモートワークによる混乱や多少の不便はあっても、立体をコツコツと動かしては撮影する現場は元々孤独なものだ。

コロナ禍で岐路に立つアニメーション(上) リモートとアフレコの課題
コロナ禍で岐路に立つアニメーション(下) 人の心を潤す力を信じて

 前回(「[1]社会現象となった『モルカー』と異色の長編『JUNK HEAD』」)紹介の2作品の他にも、コロナ禍の日本で数多くの話題作、知られざる意欲作が日々制作されている。本連載第2回、第3回はそうした多彩な新作群を紹介したい。

実力派スタジオのコラボ配信作品『ギョロ 劇場へ』

 日本最大のストップモーションスタジオ「dwarf(ドワーフ)」は、ホリプロとの共同企画による3分20秒のオリジナルミュージカル短編『ギョロ 劇場へ』を制作し、3月31日にYouTubeチャンネルにて動画配信が開始された。オペラグラスのギョロ、少年、祖父と母が劇場への思いを歌う。

『ギョロ 劇場へ』 © HoriPro/dwarf拡大『ギョロ 劇場へ』 © HoriPro/dwarf
『ギョロ 劇場へ』 © HoriPro/dwarf拡大『ギョロ 劇場へ』 © HoriPro/dwarf

 構成・脚本・歌詞はミュージカル演出家の宮本亞門氏、映像演出は春山“デビ”祥一監督が担当。マリオネット人形による実写操演とストップモーションアニメーションを組み合わせたハイブリッド作品として制作された。映像メディア専門の人形劇・人形制作会社スタジオ・ノーヴァが操演人形の仕掛け制作を、東京・新宿に日本初の人形劇専門劇場を持つ人形劇団プークが操演を担当した。

『ギョロ 劇場へ』 © HoriPro/dwarf拡大『ギョロ 劇場へ』 © HoriPro/dwarf

 アニメーション制作は、ドワーフの松本紀子プロデューサーの提案により、世界中の映画祭で受賞が相次ぐ『ごん GON, THE LITTLE FOX』(2019年)を制作したスタジオ「TECARAT(テカラ/太陽企画)」が担当した。ドワーフとテカラ、日本のストップモーションの2大スタジオの夢のコラボレーションの実現である。キャラクターデザインはドワーフの合田経郎氏、造形とアニメートはテカラの八代健志氏が担当した。

 通常ストップモーションの撮影ではアーマチュア(金属の骨格)を内包し、自在なポーズで静止させるパペット(人形)を使用する。しかし、本作ではあえてアーマチュアのない木彫のマリオネットを使用し、糸吊りやリグ(固定用の棒)もそのまま撮影し、操演パートとの融合を試みている。自然照明と舞台風照明の混在や、流麗で動的なミュージカルに表情など制限の多いマリオネットで挑んだ実験的姿勢も興味深い。

『ギョロ 劇場へ』の制作風景 © HoriPro/dwarf拡大『ギョロ 劇場へ』の制作風景 © HoriPro/dwarf
『ギョロ 劇場へ』の制作風景 © HoriPro/dwarf拡大『ギョロ 劇場へ』の制作風景 © HoriPro/dwarf

 また、ドワーフはストップモーションの新作シリーズ『リラックマと遊園地』の制作を発表している。Netflix配信で好評を博した『リラックマとカオルさん』(2019年/小林雅仁監督)の続編であり、こちらも大きな話題となっている。

『リラックマと遊園地』 ©San-X Co. Ltd. All Rights Reserved拡大『リラックマと遊園地』 ©San-X Co. Ltd. All Rights Reserved

ミュージカルショートムービー『ギョロ 劇場へ』
ホリプロによる告知
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筆者

叶精二

叶精二(かのう・せいじ) 映像研究家、亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師

映像研究家。亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師。高畑勲・宮崎駿作品研究所代表。著書に『宮崎駿全書』(フィルムアート社)、「『アナと雪の女王』の光と影」(七つ森書館)、『日本のアニメーションを築いた人々 新版』(復刊ドットコム)、共著に『王と鳥 スタジオジブリの原点』(大月書店)、『マンガで探検! アニメーションのひみつ』(全3巻、大月書店)など。

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