林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
コロナ禍で苦戦するフランスの映画館(上)――上映再開はしたけれど
コロナ禍で苦戦するフランスの映画館(下)――公的支援は手厚いが……
フランスで「年中無休」と言えば、コンビニではなく映画館。正月やクリスマスでさえ、休み返上で映画ファンを受け入れてきた。ところが、悪夢のコロナ禍到来。たび重なるロックダウンで、その扉は固く閉ざされた。昨年(2020年)のポスターが貼られたままの映画館の前を通るたび、虚しい気持ちに襲われてしまった。だがようやく、トンネルの先に光明が見えてきた。
4月末、政府は外出制限の段階的解除スケジュールの発表に踏み切った。映画館、美術館、劇場などの文化施設、(生活に必要不可欠でないとされる)商店、カフェやレストランなど飲食店のテラスが、5月19日より条件付きで再開が許可された。映画館は感染第2波到来で閉鎖された昨年10月末以来、約6カ月半ぶりの再開に。ひとまず「第3波のピークは超えた」と見なされ、外出制限の解除が決まったのだ。
映画館に関しては、関係者から再開を求める声が非常に強かった。映画館の閉鎖が最初に始まってから1年にあたる3月14日には、パリ独立系映画館団体CPI(Cinémas Indépendants Parisiens)の有志らが、再会を求める会を催している。
文化施設ではこれまでクラスターが起きていないこと、必要不可欠とされる商店は普通に営業していること、多くの近隣諸国の文化施設がすでに再開していることなどもあり、文化施設の再開を求める声には市民も同情的だったと言える。それに、そもそも娯楽が足りない状況に市民の飢餓感、うんざり感があったろう。
とはいえ、フランスはコロナ禍を楽観視できる状況にはほど遠い。ワクチン接種を急ピッチで進めてはいるが、相変わらず変異種の脅威に晒されている。近隣諸国に比べても、5月20日の時点で新規感染者数が欧州トップという厳しい状況にあるのだ。
政府は感染が再び広がった場合、解除に「急ブレーキ」を作動させると明言している。これまで重要な声明は、マクロン大統領のドヤ顔テレビ会見になることが多かった。しかし今回、例外的に少数の地方紙記者を前にした“コソコソインタビュー”で情報を開示した。「氷上」を歩くリスクを自認しているためか、イメージ戦略に血を注ぐ大統領としては、選択を誤って、後から「負のイメージ」が自分に貼り付くのを少しでも回避したいようにも見えた。
ちなみに「急ブレーキ」を作動させる目安は、「新規感染者数が10万人あたり400人以上」「感染者数の急激な増加」「集中治療病床の逼迫状態」である。
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