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【公演評】月組『桜嵐記』『Dream Chaser』

珠城りょうサヨナラ公演、勇敢で美しい武将と正統派黒燕尾で男役の神髄を魅せる

さかせがわ猫丸 フリーライター


 月組公演、ロマン・トラジック『桜嵐記(おうらんき)』、スーパー・ファンタジー『Dream Chaser』が、5月15日、宝塚大劇場で初日を迎えました。

 この公演で退団となるトップスター珠城りょうさんが最後に演じるのは、激動の南北朝時代に生きた武将・楠木正行。スケールの大きな珠城さんの実直なたくましさ、やさしさが生きる歴史ロマンです。作・演出は、珠城さんのバウホール初主演作『月雲の皇子』を手掛けた上田久美子さん。相性の良さはお墨付きながら、期待を大きく上回る感動作となりました。

 2幕のショー『Dream Chaser』では、スパニッシュやタンゴから黒燕尾まで、珠城さんの魅力を最大限に網羅し、サヨナラ公演らしい演出の連続に、すべての宝塚ファンが胸を打たれることでしょう。

 まさに珠城りょう集大成となった芝居とショーで、一緒に卒業する相手役の美園さくらさんとともに有終の美を飾っています。(以降、ネタバレがあります)

美しき武将の珠城

拡大『桜嵐記』公演から、楠木正行役の珠城りょう=岸隆子 撮影

 物語のプロローグは、鎌倉幕府滅亡後の時代背景がダイジェストで描かれます。ストーリーテラーのように登場する光月るうさんと夏月都さんが何者なのかは、最後までのお楽しみとしましょう。

 京都を制圧した武家の北朝と、吉野山に立てこもる公家の南朝。政権をめぐって争うも、圧倒的兵力を持つ北朝を前に、南朝は風前の灯です。それでも、後醍醐天皇(一樹千尋)と南朝を守るため、楠木正成(輝月ゆうま)は最期まで戦い続けました。

 正成にはその遺志を継ぐ3人の息子、三男・正儀(月城かなと)に次男・正時(鳳月杏)、そして長男・正行(珠城りょう)がいました。合戦に見立てた群舞で登場する三兄弟の、なんとりりしく華やかなことか。キャスティングの絶妙さに、さっそく満足度指数が急上昇を描きます。

 大黒柱の風格をまとった珠城さんは、美丈夫な武将姿がまぶしく、特に戦闘シーンで炎の中から登場するカッコよさはため息もの。強いだけでなく、懐深くあたたかな正行の人物像も、珠城さんそのものに重なるようです。

 なんのために戦うのか、自分の命をどう使うのか……己の信念と忠義のために命を懸ける正行のセリフはことごとく胸に突き刺さり、その男気に、ますます惚れずにはいられません。

 珠城さんのトップ就任は、天海祐希さんに次ぐ歴代2番目の早さでした。恵まれた体格で当時より男役として完成はしていましたが、経験を重ねて渋みが加わり、押す演技でも引く演技でも魅せられるようになった今、これからが熟成期だったのではと、名残惜しさは尽きません。いまもなお進化し、魅力を更新し続けながら散っていく潔さもまた、男役の美学でしょうか。そんなところも正行と重なって見えるようでした。

◆公演情報◆
『桜嵐記』『Dream Chaser』
2021年5月15日(土)~6月21日(月) 宝塚大劇場
2021年7月10日(土)~8月15日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
『桜嵐記』
作・演出:上田久美子
『Dream Chaser』
作・演出:中村暁

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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