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韓国の人たちは住宅チョンヤク(請約)システムで一財産築いています!?

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

 前回は、韓国の不動産のチョンセ制度についてお話ししました。今日は、チョンヤク(請約)という新築分譲マンション(アパート)を買う時のシステムについてお話ししようと思います。

 不動産の話はちょっと退屈な話になるかもしれませんが、韓国の人たちは、このチョンヤクで一財産を増やしていると言っても過言ではありません。韓国に知り合いがいる方は、思い起こしてほしいのですが、韓国の人たちって結構裕福な生活してるな~と思ったことありませんか。私は、よく不思議に思ってたんです。そのわけには、このチョンヤクも一役買っていたのでした。

 日本から韓国に飛行機でやって来るとき、韓国上空から見下ろすと、高いマンションが林のように建っている光景を目にすると思うんですが、どうでしょう? そんなマンションに住んでいる人たちって、50%を超えてるんじゃないかなと思うんですが、とにかく、結構一般的な「すみか」なのです。

ソウルのマンション群。中央左では新たに建設が進んでいる=2020年6月、東亜日報提供拡大ソウルのマンション群。中央左は建設中のマンション=2020年6月、東亜日報提供

 が、ソウル近郊(日本でいうと埼玉とかかな)で、85平方メートルくらいのマンション(韓国には20階から30階建てくらいのマンションが一般的)の新築の売買価格は、安くて7億ウォン(約7000万円)~くらい。ソウル市内では中古でもだいたい10億ウォンから始まり、30億ウォンもするマンションがあります。こっちで暮らし始めた当初は、みんなよくあれだけ高いマンションに住めるな……と思っていたものです。

 そのわけが、住宅チョンヤク(請約)システムなのです。

 チョンヤク(請約)の第一ステップは、どこの銀行からも商品として出している「住宅チョンヤク(請約)通帳」を作ることです。この口座を開設し、普通は、毎月1万~3万円くらいを定期貯金みたいに積み立てます。そして、2年くらいたつと、新築分譲マンションを買う資格が得られます。逆に言うと、新築分譲マンションを買う人は、だいたいがチョンヤク・システムで買っているわけなんです。なぜなら、相場より安いからです。

 どこのどの分譲マンションを買うかは、住宅請約が運営するホームページがあり、そこで選ぶことができます。しかし、立地条件がいい物件になるほど人気が高く、抽選になります。その倍率が高いんです。特にソウル市内や近郊都市などは何百倍になってしまいます。そこで抽選するにしても、選考順位があって、たとえば、国家の英雄(戦争時の英雄)の子孫、障がい者、持ち家の無い人、子どもが3人以上、などなど、いろいろあって、有利な条件で抽選することができます。

 何も該当しない人は、一番順位が低く、ましてチョンヤク(請約)通帳もなければ、そのままオープン市場価格で買わなければいけなくなるのです。


筆者

ミン・ヨンチ

ミン・ヨンチ(閔 栄治) ミュージシャン 韓国伝統音楽家

大阪生まれ。幼少の頃からブラスバンドやドラムを経験し、高校から韓国へ。旧李王朝雅楽部養成所であった国立国楽高等学校に入学、ソウル大学音楽学部国楽科卒。1992年サムルノリ競演大会個人部最優秀賞。1992年国楽室内管弦楽団「スルギドゥン」に入団。1993年スーパー・パーカッション・グループ「PURI」創団メンバー。イ・ムンセ(歌手)のテレビ番組にも出演。現在も韓国伝統音楽とジャンルの違う音楽とのコラボレーションに活動中で、2009年に立ち上げた公演「新韓楽」ではジャズとコラボ―レーションした。日韓両国で数多くの公演。アルバム「HANA」(2015年/ユニバーサルミュージック・ジャパン)をリリース。ライブでは日本全国3万人を動員。国楽管弦楽の作曲にも力を入れ、2014年韓国文化芸術委員会で作曲賞受賞。「大衆に楽しんで聞いてもらえる楽曲作り」を目指す。現在、韓国芸術総合大学、梨花女子大学、秋藝芸術大学講師。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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