前田和男(まえだ・かずお) 翻訳家・ノンフィクション作家
1947年生まれ。東京大学農学部卒。翻訳家・ノンフィクション作家。著作に『選挙参謀』(太田出版)『民主党政権への伏流』(ポット出版)『男はなぜ化粧をしたがるのか』(集英社新書)『足元の革命』(新潮新書)、訳書にI・ベルイマン『ある結婚の風景』(ヘラルド出版)T・イーグルトン『悪とはなにか』(ビジネス社)など多数。路上観察学会事務局をつとめる。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【36】ジェリー藤尾「遠くへ行きたい」、山口百恵「いい日旅立ち」
当初はこれほどまでに世間からは冷たい目で見られていたディスカバージャパンだったのだが、営業的には成果を上げていく。それは、目玉商品であるミニ周遊券と、その販促ツールとして開発されたスタンプの効果によるものであった。
全国1400余りの観光地に用意されたスタンプを30以上押印して集めると記念品がもらえるという企画で、今や「スタンプラリー」として定着している観光の定番アイテムの草分けである。
スタート半年後の1971年3月31日付読売新聞によると、「これが人気を呼び、開始から半年たらずで40万冊がはけた」という。しかし、1年たっても世間の冷たい評価はたいして改善されず、むしろキャンペーンに内包されていた本質的な問題点が浮きぼりにされることになった。
朝日新聞(1971年11月4日朝刊)は、社会面の半分ほどを使って「ディスカバージャパン満1年」の特集を組み、その問題点を縷々指摘している。ひとつは「観光地からの反発」で、岩手在住の農村問題研究家・大牟羅良にこうコメントさせている。
「岩手でもディスカバージャパンのポスターはどんな田舎の駅にもはってある。びっくりしますよ。『ブルースカイ東北』ということで東北を盛んに宣伝してるけど、地上の東北農民の方はことしはうまくないですよ。減反や冷害で米の作柄は悪いし、ドル・ショックで出かせぎの先行きはどうなるんだろうと、青いのは人間の顔色の方だ。現実の空気とはまったくあわないような気がします」
二つめは、「国鉄労働者からの反発」で、国鉄労組からはこんな指摘が
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