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新垣結衣&星野源の結婚で、文化(と少し政治)をつれづれなるままに考えた

矢部万紀子 コラムニスト

 このたびの緊急事態宣言のおかげで、夕飯は家で食べるほかなくなった。昭和な人間なので、食事の時はテレビ。19時からはNHKのニュース。見るたび暗くなる。新型コロナウイルスの勢いは衰えないし、ミャンマーでもガザでも罪なき人々が殺されている。だからビール片手に半目で見ている。

 ところが5月19日、半目がバチっとあいた。なんと、新垣結衣さんと星野源さんの結婚が取り上げられているではないか。「心の広い感じの方たちなので、幸せな家庭を築いていってくれると思います」などと、若者が渋谷の交差点で語っていた。

 NHK、談話まで取りに行くとは。というのは元新聞記者の感想だが、かなりの力の入れようだ。「星野さん=紅白歌合戦の常連」「ガッキー=来年の大河ドラマ出演」という大人の事情もあるかも。とはいえ、連日の暗い「ニュース7」がそこだけ明るくなった。NHKも渋谷の若者も、みんなが2人の結婚を喜んでるのね。と、素直になることに。

 22日の「ワイドナショー」(フジテレビ)では、松本人志さんが「僕らの世代で言ったら、(山口)百恵ちゃんと三浦友和さんみたいな」と言っていた。百恵&友和といえば「赤いシリーズ」、ガッキー&源といえば「逃げ恥」こと「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)。趣はまるで違うけど、どちらも「社会現象」になった。ガッキー&源、国民的スターの勢い。

「逃げ恥」「星野源」「新垣結衣」とともにつぶやかれた言葉。SNS分析ツール「ブランドウォッチ」を使って抽出した新垣結衣さんと星野源さんの結婚発表後、ツイッターでつぶやかれたフレーズやハッシュタグ(SNS分析ツール「ブランドウォッチ」を使って抽出)

ガッキーの独立、「逃げ恥」の心意気とは

星野源さんとの結婚と事務所からの独立を発表した新垣結衣さん星野源さんとの結婚と事務所からの独立を発表した新垣結衣さん

 「逃げ恥」スタートは、2016年10月。クリスマスには、エンディングの「恋ダンス」をキャロライン・ケネディ駐日大使(当時)が踊るほどの大人気。21年1月2日には「新春スペシャル」が放送され、平均視聴率は15.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 どちらも見て、その楽しさと心意気に感服していた1人だから、みくり(新垣さん)と平匡(星野さん)の結婚はうれしかった。と同時に、もう一つうれしいことがあった。それは、新垣さんの事務所からの独立。結婚と同時に発表されたと19日の夜中にネットニュースで知り、反射的に「やったね」と思った。

 連名での発表とは別に、自身のオフィシャルファンクラブのサイトで結婚と独立を発表した新垣さん。独立について説明する文章を読んで、ニンマリした。そっかー、ガッキー、なんか「逃げ恥」っぽくてよいなー。そう思った。

 今年、仕事を始めてちょうど20年になる。新垣さんは、そう書いていた。だから独立を「二度目の成人を迎えたような」気持ちだ、と。そして、こう続けた。「これからもより一層、お仕事一つ一つに、そのすみずみに、責任と真心を持って向き合い、なにより、楽しむ気持ちと感謝の気持ちを大切にしながら歩んでゆけたらと思っています」。うん、これって、みくりっぽいっていうか、「逃げ恥」っぽい。

 「逃げ恥」は、偽装結婚から恋が生まれるラブストーリー。でも私にとって一番印象に残っているのは、「それは、やりがい搾取です」というみくりの台詞だった。不勉強ゆえ、それまで「やりがい搾取」という言葉を知らなかった。でも、みくりが言った途端

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