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【公演評】雪組『ほんものの魔法使』

テーマパークの華やかさとほろ苦い余韻、朝美絢の透明感でファンタジーの世界を彩る

さかせがわ猫丸 フリーライター


 雪組公演、ロマンス『ほんものの魔法使』が、5月21日、宝塚バウホールで初日を迎えました。朝美絢さんはこれが二度目のバウホール主演で、今回はKAAT神奈川芸術劇場が加わった、初の東西主演作品となります。(以下、ネタバレあります)

 魔術の都にたどりついた青年アダムは、ほんものの魔法使いだった?――華やかでテーマパークに飛び込んだかのような物語は、1966年にアメリカの作家ポール・ギャリコが発表した小説をミュージカル化したもの。朝美さんが醸し出す少年のような透明感で、ファンタジーの世界を、より一層ロマンチックに彩っています。アダムの相棒の“犬”に扮した縣千さんの活躍や若手スターの台頭など、見どころ満載となったこの作品。思わず吹き出すシーンもちりばめた夢の世界に、雪組生28名が全力で挑みます。

ファンタジーが似合う朝美

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 男役といっても、一口には語れないものです。頼もしくて男くさい人もいれば、コスプレが似合うゴージャスな人、キュートで守ってあげたくなる人もいて、そのタイプは千差万別。あらゆる魅力を楽しめるのが宝塚の良さでもあるでしょう。

 朝美さんはその中でも、クールな美少年タイプでしょうか。テレビの歌番組に出演するたび、ネットで話題が沸騰するのもおなじみとなりました。そんな朝美さんとファンタジーの組み合わせなんて、期待感しかないかも!?

――魔術の都マジェイア。アダム(朝美)は、相棒の犬モプシー(縣)とともに、魔術師・名人組合に入るため、はるばるストレーン山脈を超えてやってきた。やがてアダムは檻の中で泣いているジェイン(野々花ひまり)と出会う。ジェインは魔術師を夢見ていたが、理解してくれない父ロバート(久城あす)に閉じ込められたのだという。アダムは枯れ枝に花を咲かせてプレゼントし、魔術で檻から救い出すと、感激したジェインは助手になりたいと言い出すのだった。

 スモークの中、朝美さんが登場し、一人舞台で歌い踊るという、王道のオープニングで幕が上がりました。よく伸びる歌声は美しく、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』で女役を経験したことも影響したのでしょうか、歌唱力が急速に高まっていることを実感します。

 アダムは純粋無垢で、人を疑うことを知らず、うそをつくこともできません。何があっても淡々としていて、セリフの一つひとつが人間の本音をグサリと突いてくる……その無垢さがこの後、大きな騒動を巻き起こしてしまうのですが、けがれのないアダムに朝美さんの等身大の演技が生きています。

 月組生だった2014年、『PUCK』新人公演で主演をつとめ、大好評を博したことを思い出しました。夢の世界をそのまま体現できる朝美さんは、今、宝塚で最もファンタジーが似合うスターさんかもしれませんね。

◆公演情報◆
『ほんものの魔法使』
Based on the novel
THE MAN WHO WAS MAGIC by Paul Gallico
Copyright (C)1966 by Paul Gallico
Licensed by Mathemata Anstalt c/o Ensemble Entertainment through Tuttle-Mori Agency,Inc.,Tokyo
2021年5月21日(金)~6月1日(火) 宝塚バウホール
2021年6月8日(火)~6月16日(水)  KAAT神奈川芸術劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:ポール・ギャリコ
脚本・演出:木村 信司

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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