「どんど、どんどと鳴る屁は臭い、鳴らぬスコ屁は、なお臭い」
これは助産師(当時は産婆さんと言った)であった私の祖母が、「誰かがそれをしたときに」何度となく、子どもだった孫の私たちに言っていた言葉だ。
訳すると、「どんど、どんど」とはつまりは「ぶー」とか「ぷー」というおならの音、そういう音がすればそんなに臭くないよね(でも臭いのもあるが)、それより、音がしない「すー」というおなら(「鳴らぬ、スコ屁」がこれ)はもっと臭いよ、という意味で、「だれだ、だれだ、おならしたのは!?」というような意味合いで言われた子どもたちは「違う、違う」と大笑いしていたものだ。ちなみに、祖母は私たちと同居していたので日常茶飯事にこういうことがあった。

「さざ波」に続いて「屁みたいなもの」で内閣官房参与を退職した高橋洋一氏
高橋洋一内閣官房参与が「さざ波」発言で叩かれた後、さらに間を置かずして5月21日に、緊急事態宣言のことを「屁みたいなもの」とツイッターで投稿したことがまた炎上した。3日後の24日、責任をとって退職か、という一連の報道がわーっと流れた途端に「退職」して、それこそ波が引くようにさーっと消えていった。
これらの報道の中で、何度も「屁」「屁」「屁」と繰り返される中、私の頭にこだましていたのが、冒頭の「どんど、どんど……」というおばあちゃんの声だった。さらに、助産師で看護師でもあった祖母は、「屁」の話になると「屁がいかに大事なもの、サインであるか」を孫たちに語っていたことも思い出していた。「おならが出ないと大変なんじゃ」とも繰り返し言っていた。
「緊急事態宣言を“屁”というなんてけしからん」というのが大方の主張だということもよくわかるが、この場合の「屁」は大したことがないものという意味内容の象徴として無意識に使っているのは明らかだ。