メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

渡辺大インタビュー、舞台『魔界転生』大阪公演開幕!

宮本武蔵、自分を投影して演じたい

真名子陽子 ライター、エディター


 舞台『魔界転生』の大阪公演が2日に開幕した(新歌舞伎座にて、10日まで。途中、休演日あり)。

 この世に無念を残し、黄泉の国から転生した天草四郎率いる悪霊集団・魔界衆、幕府の命を受け、悍ましい魔界衆に立ち向かう剣豪・柳生十兵衛を中心とした勇敢な柳生衆、寛永14年(1638年)に起きた「島原の乱」を発端に、両者の血で血を洗う激しい戦いが繰り広げられる、アクションとカルトとスペクタクルを融合したエンターテインメント時代劇『魔界転生』。1967年に「おぼろ忍法帖」として単行本化された山田風太郎の伝奇小説で、脚本をマキノノゾミ、演出を堤幸彦が手がけた舞台版は2018年に初演され、約2年半ぶりに再演された『魔界転生』。4月に愛知で幕が開いた本公演もいよいよ最終公演地の大阪で幕が上がった。

 柳生十兵衛を演じる上川隆也を筆頭に、小池徹平(天草四郎)、藤原紀香(お品)、村井良大(根津甚八)、木村達成(柳生又十郎)、浅野ゆう子(淀殿)、松平健(柳生宗矩)と豪華なキャスト陣が揃う中、本作が初舞台となる宮本武蔵役を演じる渡辺大に話を聞いた。

堕ちていく人間の色気を表現できれば

拡大渡辺大=久保秀臣 撮影

――この作品の魅力は何でしょう?

 歴史の中で、生まれてくるのが数年遅ければ天下を取っていただろうと思える人がいると思いますし、あの偉人たちがもし同じ時代に生きていたら…という議論はこれまでもいろいろされてきたと思うんです。柳生宗矩や十兵衛、宮本武蔵が同じ時代に生きて戦っていたらどうだったんだろうという、歴史好きの方などはワクワクするような作品だと思います。更にそれをエンターテインメント作品として落とし込んでいますので、歴史好きでなくても楽しめる作品になっています。

――演じる宮本武蔵役について、どのように捉えていますか?

 僕が描く宮本武蔵は剣の道を求め生きた求道者だと思っているのですが、今回、『魔界転生』の宮本武蔵は、剣の道を極めようとし過ぎるあまり、魔界から蘇ってしまい魔界衆となってしまうという、とても人間臭さがあります。史実と違う人物像ですが、欲望に抗えず堕ちてしまうところにも宮本武蔵の魅力があるのではと思っていますので、その堕ちていく人間の色気を表現できればと思っています。

舞台映えする二刀流

拡大渡辺大=久保秀臣 撮影

――この作品は殺陣もふんだんにあって、宮本武蔵は二刀流で有名です。

 宮本武蔵が開いた二天一流という流派があります。今回初めてさせていただくのですが、一刀と二刀ではまったく形が違うんですよね。かなり変則的な動きになりますので、立ち回りは早めにアクションの先生と一緒にお稽古をしていきました。慣れてくるとすごく面白くて、自分からこういう動きができるんじゃないかなと試したり、宮本武蔵はどういう形で見せたのかなと考えながらお稽古をしました。本番ではそれをたくさんお見せできるのではないかと思っています。

――二刀流の面白さをもう少し詳しく教えてください。

 片方の剣先は相手に向けて、もう片方の検先は別の方向に向けるという、とても奇妙な動きになります。一刀だと相手に向かってただすっと抜くところを、片方は真っ直ぐ抜いて片方は別の方向に抜くのですが、抜いた時に二刀の剣先の高さがそろうと決めポーズが決まらないんですね。二刀の見せ方がとても難しくて、実際にやってみないとわからないことがたくさんありました。二本ありますので上下左右に動かすことになるのですが、動きのリズムが取りにくいんです。そこに足さばきも加わり、それぞれの動きはバラバラなんだけれどもすべてを連動させないといけない。それを美しく見せる方法があるのですが、見ているだけでは覚えられなくて、動きながら体に入れ込んでいかないと。でも、型が決まった時は一刀とは違う心地よさがあって、左右に広げますからとてもダイナミックに見えますし、大きく見せることができるのでとても舞台映えします。松平健さんとの一騎打ちもありますのですごく楽しみにしています。

ルーキーのつもりでたくさん教わりたい

拡大渡辺大=久保秀臣 撮影

――今作が初舞台なんですよね。

 17歳でデビューさせていただいて20年経つんですけれども、初めて舞台をやることになりました。これまでお話はいただいてもタイミングが合わなくて断念することがあり、今回このようなご縁をいただき感謝していますし、宮本武蔵という役をやらせていただくこともとても光栄に思っています。1公演1公演やり直しがききませんので、たくさん準備してとにかく突っ走って走り切りたいと思っています。悔いのないように演じたいです。

――舞台に出たいという思いはあったのでしょうか。

 いつか舞台に挑戦したいという思いはずっと持っていました。舞台はよく観ていますし、舞台の面白さは感じていましたのでいつかご縁をいただけたらいいなとは思っていました。今回このような形で叶ってとてもうれしいです。

――初舞台で錚々たるメンバーの座組に入ることになります。

 ほとんどの方が初めて共演させていただくんです。ルーキーのつもりで皆さんの中にどんどん入っていって、いろんなことを吸収したいと思います。映像作品と違って稽古場からずっと一緒にいられますし、大先輩の方々からいろんなことを教わりたいと思っています。

演じることは僕の人間性を見つめ直すこと

拡大渡辺大=久保秀臣 撮影

――宮本武蔵はたくさんの方が演じてこられました。そのプレッシャーはありますか?

 宮本武蔵に限らず、どんな役においても、その都度演じる方の人間性が出ていると思います。僕は役を演じるにあたって、自分の人間性と役が地続きでつながっていて紐付いていると思っています。役になりきるというよりかは僕自身に役がくっついているような、今回の役で言うと、宮本武蔵を僕を通して見ているというところがあります。同じ役をいろんな方が演じても絶対に同じものにはならないので、あまり考えないようにしています。僕が今回の宮本武蔵に感じている“欲に溺れて堕ちていく人”というその弱さなどを表現できればと思っています。僕という肉体と声を通してしかお伝えできないんですよね。では何が大事かというと僕自身になると思いますので、役を演じるにあたって僕の人間性を見つめ直していくことが大事なんだと思っています。

――これまでもそういう風に役作りをされてきたんですか?

 そうですね。テクニカルな部分も必要と思いますが、お客様は何を観てくださっているかを考えたときに、役と演じる人の人間性や個性に惹かれると思うんですよね。テクニックがあったとしても、役からかけ離れてしまうと興味を持っていただけないと思いますので、必ず自分を通して宮本武蔵に投影して演じないといけないと思っています。どんな役もそうですけれども、リアル感がなくなってしまうんじゃないかなと思うんです。

――共通点を探すということ?

 まずは自分が何者かをわかった上で演じる必要があると思います。人間の弱さや儚さを自分でどれだけわかっているか、どれだけそれを許容しているか、またそれに対してどう抗っているか。自分の人生経験や人間性を培っていく中で得たものや感じたもの、その中にどこか共通点があるんじゃないかなと思って探しています。必ず何かしら共通点があるんですよね。

20年やり続けてきたことも悪くなかったな

拡大渡辺大=久保秀臣 撮影

――このコロナ禍で役者として表現することが止まってしまいました。

 大先輩の津川雅彦さんが、文化や演劇は腹の足しじゃなくって心の足しなんだと。腹は膨れないけれど、心の足しで生きていけるのが人間だと思うんですよね。演劇や映画などいろんな形で文化を形成し、人間が人間たる生活をして社会を形成することで生きていけると思うんです。完全に演劇が消えるということはないと思うけれども、やはりこの一年、心の飢餓で辛くなった方はたくさんいたんじゃないかなと思います。役者の中にもたくさんいました。ただ、プラスに捉えて言うならば、演劇が再開され始めた中、その飢餓から少しずつ解き放たれていますので、そういう時に観る作品はとても面白いんじゃないかなと思います。まさに『魔界転生』はいろんなことが詰まっているフルコースの作品ですから。

 僕自身のことで言うと、演じることに飢えていた中にこのお話をいただきました。この時期に初めての挑戦をさせていただけることに、新たな転換期が来たなと自分で思えたんです。なんだかんだ20年やり続けてきたことも悪くなかったなと思えましたので、すごく楽しみです。

――20年というキャリアの中で、初めてのことに挑戦することに怖さなどはありませんでしたか?

 今の状況だけでなく、これからも何が起こるかわからないじゃないですか。だから役者に限らず、いろんな事をどんどん取り込んでいきたいですし、この状況を上回るアドレナリンを出して突破していかないとダメなんじゃないかと思うんです。せっかくなんだからやらなければ損だよという気持ちにもなりました。演じるにあたって生みの苦しみはあると思いますけれども、それはもうやるしかないですし、それと向き合う楽しさがあります。

拡大渡辺大=久保秀臣 撮影

――では最後にメッセージをお願いします

 まだまだ大変な状況が続いていますが、一緒に楽しく盛り上げていきたいと思っています。演劇を楽しんでいただきたいと思っていますし、演劇は観ていただく方がいて継承されていくものだと思います。その相互関係の歯車がうまく回っていけばいいなと思います。本当は観終わった後に感想を言い合えるのが文化としての楽しみだなと思うのですが、それもう少し我慢していただいて、まずは作品を楽しんでいただければと思います。明日への活力となる作品ですので、ぜひ観にいらしてください。

◆公演情報◆
舞台『魔界転生』
6月2日(水)~10日(木) 大阪・新歌舞伎座
※6月5日(土)~7日(月) 公演中止及び休演日
公式ホームページ
チケットぴあ
イープラス
ローソンチケット
梅田芸術劇場オンラインチケット
[スタッフ]
原作:山田風太郎(角川文庫刊)
脚本:マキノノゾミ
演出:堤 幸彦
[出演]
上川隆也、小池徹平、藤原紀香、村井良大、木村達成、田村心、岐洲匠、宇野結也、財木琢磨、山口馬木也、渡辺大、浅野ゆう子、松平健  ほか

〈渡辺大プロフィル〉
 2002年俳優デビュー。テレビドラマや映画に多数出演、本作が舞台初出演となる。最近の主な出演作は、『ライジング若冲 ~天才 かく覚醒せり~』『コールドケース3 〜真実の扉〜』『十三人の刺客』『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』など。2022年公開の『峠 最後のサムライ』に出演。
公式ホームページ
公式Instagram 
公式Twitter

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

真名子陽子の記事

もっと見る