〇〇さんは、大手ゼネコン勤務で年収は1000万円、配偶者は契約社員で働いており、年収は100万円。二人にはかわいい子どもがいます。
この文章を読んで、「〇〇さん」は「男性」で、「その配偶者」は「女性」というイメージが浮かぶだろうか。はたまた、その逆は思い浮かぶだろうか。
けいこさんは、大手ゼネコン勤務で年収は1000万円、旦那の太郎さんは契約社員で、毎日家で家事をしています。
という文章に違和感を覚えるだろうか。
あるいは、ご自身の娘さんがこのけいこさんの立場で、結婚したいという相手の男性に定職がないと言われたら、手放しで喜ぶだろうか、それとも「男のくせに稼ぎもろくろくないなんて、けしからん」と思うだろうか。
太郎さんは、大手ゼネコン勤務で年収は1000万円、奥さんのけいこさんは契約社員で……
もうおわかりだろう。そして、前回紹介したように、20時台に行われた首相の記者会見場に女性がほとんど姿を見せられないわけもある程度推測できるだろう。あそこで仕事をしている男性の多くには、おそらく家を守ってくれている女性がいるはずなのである(きちんと調査したわけではないので、そうでない方がいたらご容赦ください)。
この日本には、「男は稼いでなんぼ(価値がある)」という根深い価値観が染みわたっている。

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どんなに男女共同参画が大事、管理職にも女性登用が必要と声高に言われようが、いざ、我が娘が、身近な人が「結婚する」という場面に遭遇したとき、その価値観が見事に露呈する。まさに「総論賛成、各論反対」の一事例である。その一つの答えとなるデータが、就業者の年収別の未婚率で示されている(グラフは、舞田敏彦「「未婚率」と年収の関係 結婚のリアルな現実」<日経woman>より)。

【グラフ1 就業者の年収別の未婚率(%) *35~39歳の男女】 舞田敏彦「「未婚率」と年収の関係 結婚のリアルな現実」(日経woman)より *縦軸は未婚率(%)、横軸は年収(万円)を表している
30代後半(35~39歳)の年収と既婚率の「不気味な『X』」と称されたこのグラフの意味するところは、男性は収入が低いほど未婚率が高い(青線の左の方)、逆に女性は収入が高い人ほど未婚率が高い(赤線の右の方)、ということである。特に青線で示された男性のデータの右肩下がり、つまり高収入男性の未婚率が低いことは顕著である。