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瀬戸康史、ミュージカル『日本の歴史』に出演!

歴史の中で生き続けてきた人たちと、いまの自分に同じものが流れている

橘涼香 演劇ライター


 卑弥呼の時代から太平洋戦争までの約1700年に亘る日本の歴史を凝縮しただけでなく、そこに、ある家族の歴史の物語も重ね合わせて描かれた斬新な構成が高い評価を得た、作・演出三谷幸喜×作曲・荻野清子によるオリジナルミュージカル『日本の歴史』が、7月6日~18日東京・新国立劇場 中劇場、7月23日~30日大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで再演される。

 『日本の歴史』は歴史上の偉人たちから市井の人々、テキサスの家族までの60人以上の登場人物たちを、たった7人のキャストが演じるオリジナルミュージカル。しかもそれらの登場人物一人ひとりに歴史があり、語られるべき物語があることを確かに感じさせる三谷幸喜の巧みな脚本・演出と、帰り道に自然に口ずさんでしまう荻野清子の音楽が、単なる歴史の出来事の羅列ではない骨太な人間ドラマを生み出した。

 そんなオリジナルミュージカル待望の再演に際して、初演メンバーである中井貴一、香取慎吾、新納慎也、シルビア・グラブ、宮澤エマ、秋元才加の面々に混じって、初登場するのが瀬戸康史。三谷演出作品『23階の笑い』(2020年上演)での大活躍の記憶も新しい瀬戸が、三谷渾身の壮大な大河ミュージカルにどう取り組むのか。新たな作品を前にしたその思いを瀬戸が語ってくれた。

早替わりの大変さを含めて楽しめたら

拡大瀬戸康史=宮川舞子 撮影〈ヘアメイク/須賀元子・スタイリスト/小林洋治郎(YOLKEN)[ジャケット200/KHONOROGICA(HEMT PR:03-6721-0882)・パンツ900/lroquois(Iroquois head shop:03-3791-5033)、他スタイリスト私物]〉

――初演を観客としてご覧になっているとのことですが、その時の感想はいかがでしたか?

 初演を拝見した時には「面白い芝居を観たな!」というのが率直な感想でした。耳に残る歌がとても多く、楽しく口ずさみながら帰ったのをよく覚えています。

――その作品に今回出演ということになった訳ですが。

 正直、想像もしていませんでしたから驚きましたし、初演が素晴らしかっただけに自分で大丈夫だろうか? という気持ちもあったのですが、何よりも三谷幸喜さんからお声がけいただけたということがとても嬉しかったので、やらせていただこうと思いました。

――60以上の役柄を7人の役者さんで演じ分け、更に1700年の歴史を一気に駆け抜けるという壮大な作品ですが、時代も身分も様々に異なる役柄を演じ分ける楽しさ、また難しさは?

 具体的にはまず早替わりの大変さなどがありますが、そこも含めて楽しめたらいいなと思っています。ひとつの作品で色々な役を演じられるというのは役者にとって非常に面白いことですし、良い意味で一つひとつの役を軽やかにやれればいいのかなと。初演を拝見した時に、とても念入りな稽古とリハーサルを重ねて作られているという印象が強かったので、色々難しい時期ではありますが、今回もそうできたらと願っています。

拡大瀬戸康史=宮川舞子 撮影

――十役ほどを演じられると伺っていますが、中でも楽しみにされている役柄はありますか?

 楽しみにというよりも、地味に大変だなと思っているのが、秋元才加さんがソロで歌われているバックでコーラスをするところで、そのハモリがむちゃくちゃ難しいんです。いま、何かひとつと言われると、一番不安を感じているそこが浮かんでしまいます!(笑)。あとはやっぱり女性役ですね。女性役をやったことはあるのですが、それをコントっぽくというのは経験がないので頑張りたいです。

――三谷作品常連の豪華なキャストが揃っていますが、共演者の皆さんへの期待は?

 僕はこれまでご一緒させていただいたのは新納慎也さんだけで、ほかの皆さんとは「はじめまして」になります。客席から拝見させていただいた時には、これだけ大変な早替わりの連続で何役も演じているのに、大変な顔を全く見せない皆さんをすごいなと思いましたし、既に出来上がっていらっしゃる方々の中にあとから入らせていただくのは、僕にとってこれまでになかったことなので緊張もしますが、皆さんと仲良くできたらいいなと思っています。やっぱり舞台作品に参加した時の出会いってとても濃密なものがあって、後々大きな糧になっているのを感じるので、とても楽しみですね。

芝居の延長から自然に歌になっていく魅力

拡大瀬戸康史=宮川舞子 撮影

――先ほど、コーラスが難しいというお話もありましたが、ミュージカルだからできることや、魅力についてはどうですか?

 僕は元々音楽が好きなんですが、ミュージカルと一口に言っても芝居の比重が大きいものと、歌に力点が高いものとがあると思うんです。今回の『日本の歴史』については、芝居に軸足があるのかな?と僕は思っていて。もちろんミュージカルなんですが、僕個人としては、表現が適切かどうかわからないのですけれども、あまり「ミュージカルなんだぞ!」という意識はしていないところがあります。それは荻野清子さんの音楽が芝居と地続きになっていて、「ここからミュージカルナンバーです!」と主張していないからこそだと思います。だから僕も「歌います!」とはあまり意識せずに、芝居の延長で歌になっていくという感覚でいられるので、それは大きな魅力ですね。

 その上最初に言ったように自然に口ずさんで帰れる素晴らしい音楽ですし、今回僕の音域をチェックしてくださって、ということは新曲があるのかな? と思っていたら、本当に僕が参加することが決まって書き下ろしてくださった新曲があるので、それは楽しみにしていただきたいです。

――昨年『23階の笑い』で三谷さんとご一緒されています。『23階…』はニール・サイモンの戯曲でしたから、また印象は異なるかもしれませんが、「演出家・三谷幸喜」に接していかがでしたか?

 三谷さんの演出に感じたことは色々ありますが、なかでも「役者のことがお好きなんだろうな」ということがよく伝わってきました。多くを語る方ではないですし、最初から「こうして下さい」とおっしゃると言うよりは、まず自由にやらせて下さって、そこから「こういう方向性はどうだろう?」と提案してくれるんです。特に稽古中に色々な方に話しかけて、三谷さんの方からコミュニケーションをとって下さるので、演出家と役者の間に壁がないのがありがたいなと。あとは、個人的な思いとして、三谷さんに褒められるとめちゃくちゃ嬉しいです!(笑)。もっと言うと、役者が演じるのを見て三谷さんが笑ってくれていると、とても嬉しいです。

拡大瀬戸康史=宮川舞子 撮影

――そんな三谷演出から引き出されたなと感じたものはありますか?

 具体的に言葉にするのは難しいのですが、コメディについては学ばせていただいたと思っています。三谷さんのコメディって緻密に計算されている部分と、その場の化学反応で生まれるものとが、とてもうまく融合されていて。全てが決まっている面と「ここは自由にやって下さい」という面があることによって生まれるやり甲斐と難しさ、その両方を三谷さんから教えていただいたなと思います。

――そこから今回の作品のオファーにつながっていくところで、三谷さんに気に入られた!と感じたエピソードなどは?

 それはちょっとわからないですけど(笑)、でもまたオファーをいただけたということは、そういうところもあったと思ってもいいのかな?とは思ったりしています(笑)

――三谷さんは役者さんにいたずらを仕掛けることでも有名ですが。

 『23階の笑い』の時にはそうした経験はなかったのですが、今度はきっとあるよ!と言われています(笑)。

この人についていけば大丈夫だ

拡大瀬戸康史=宮川舞子 撮影

――日本の歴史がテーマになっている作品ですが、瀬戸さんご自身は日本の歴史で、特にこの時代に興味があるなどは?

 正直に言うと、あまり歴史に関心が強い方ではなかったんです。もちろん歴史上の人物、実際に生きていた人を演じるに当たっては、たくさんの資料にもあたりますが、知れば知るほど難しいところもあって。ただ、この作品の中でも「自分がいま悩んでいることを、当時の人も悩んでいたのかも知れない」と歌うところがありますが、例えば大河ドラマで演じた吉田松陰の門下生の吉田稔麿は、とても若くして亡くなっている人なのですが、今の僕達と変わらない悩みを抱えている。そういう歴史の中で生き続けてきた人類の、普遍的な共通点は感じますね。

――歴史好きとしても知られる三谷作品の中で特に好きなものはありますか?

 三谷作品って何を観ても面白いんです。それはたぶん皆さんも思っていることだけに、そこと闘っている三谷さんってすごいなと思います。毎回100点、或いはそれ以上を出さないといけないという地点にいらっしゃる訳ですから。それってただ単に演劇が好きだ、創作が好きだだけでは決して乗り越えられないものだと思います。才能ももちろんですが、たくさんの努力もされていて、その全てが積み重なって次々に期待を裏切らない、より面白いものを生み出し続けているのが本当にすごいです。

 『23階の笑い』の前に『大地』という作品を創られていますが、コロナ禍のなかでのソーシャルディスタンスを考えた演出をされていたんです。世界中がこんな大変な状況に突然襲われた訳ですから、どうしても怯む部分はありますよね。にもかかわらず三谷さんはこの状況だからこそ、むしろそれを逆手に取った作品を創られた。そのエネルギーには圧倒されましたし、この人についていけば大丈夫だ。一緒にやらせていただけることが幸せだなと思っています。

拡大瀬戸康史=宮川舞子 撮影

――三谷さんに対する尊敬を強く感じますが、そうした面以外に、三谷さんの人となりをどう感じていますか?

 人が好きな方ですね。人をいじるのも大好きです(笑)。でももちろん決して人を傷つけるようなことはなさいませんし、それによって場を和ませて、緊張をほぐして、よりその人の良いところ、魅力を引き出されるんです。

――瀬戸さんご自身にもそういう経験が?

 僕もたぶんいじられているんだと思うのですが、僕がそれに気づいていないというか(笑)。真面目に受け取ってしまっていたところがいっぱいあると思います(笑)。

――これは意外だった! というところは?

 意外と言うのかわかりませんけれども、稽古場でもずっとスーツをお召しなのに最初は驚きました。僕は稽古場でずっとスーツ姿の演出家さんは初めてだったので。でも伺ったところでは、映画の撮影の時もスーツ姿で通されているそうですね。ただ、『23階の笑い』ときはスタッフジャンバーもお召しになっていました。

――瀬戸さんは以前、舞台作品には「1年半~2年に1回くらい出たい」と話されていましたが、そう明確に考えられている理由はありますか?

 舞台と映像どちらかにあまり偏らないようにと思っていて、舞台はひとつの作品と役に対峙する時間が長いので、自分の中でそれくらいのスパンが心地良いんです。

拡大瀬戸康史=宮川舞子 撮影

――それぞれに感じる魅力や違いを言葉にしていただくとすると?

 舞台は長い時間をかけて稽古をして、最終的にはお客様が入ってくださって初めて完成する。空気を共有するという舞台にしかない魅力かありますし、映像には映像でしかできない見せ方や、間の取り方があるなと思うんです。例えて言えば映像なら目の動きだけで伝えられるものがありますよね。ですから両方に接した時に、自分の中で意識して芝居のやり方を変えているつもりはないのですが、自ずから違ってくるところがあるので、両方が面白いです。

――三谷さんがコロナ禍の中、この状況を逆手に取った作品を創られたことに感動されたというお話でしたが、瀬戸さんご自身はこうした状況下でどうモチベーションを保たれたのですか?

 元々性格的にあまり暗く考え込まないタイプだったのが、まず助けになったかなと思います。例えば愚痴でもいいので周りの人たちと話をしたり、なるべく一人で抱え込まずに、想いを口に出すようにはしていました。そしてやはり何よりも、コロナ禍のなかでも、お金を払って劇場に足を運んで下さる方がいらしてくださることに幸せを感じました。エンターテイメントを求めていただけている、それ自体に役者としても勇気をもらっていますし、今度の舞台に対しても「楽しみにしています」という言葉をかけていただけることが本当に力になります。待っていて下さる方がいらっしゃるからこそ、決して立ち止まらずに進んでいきたいと思えるので、皆さんと支え合いながらやっていきたいです。

――では改めてこの舞台『日本の歴史』を楽しみにされている方々にメッセージを。

 前向きな気持ちになれる、ハッピーになれるミュージカルなので、こういう状況だからこそ必要な作品だと思っています。そのエネルギーを肌で感じていただけたらと願っています。頑張ります!

◆公演情報◆
シス・カンパニー公演『日本の歴史』
東京:2021年7月6日(火)~7月18日(日) 新国立劇場 中劇場
大阪:2021年7月23日(金・祝)~7月30日(金) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:三谷幸喜
音楽:荻野清子
[出演]
中井貴一 香取慎吾 新納慎也 瀬戸康史/シルビア・グラブ 宮澤エマ 秋元才加
演奏:荻野清子(ピアノ・ピアニカ) 阿部寛(ギター・バンジョー・マンドリン・ウクレレ) 古本大志(チューバ・ベース) 萱谷亮一(ドラム・パーカッション)

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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