メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

それでも幕は上がったーーコロナ禍と「高校演劇」〈1〉

中止、変更、様々な規制、高校生は試練の中に

工藤千夏 劇作家、演出家

甲子園より「狭き門」、 高校演劇のコンクール

 なじみのない方のために、「競技」としての高校演劇コンクールについて簡単に説明しておこう。

 全国高等学校演劇協議会(高演協)に加盟する約2000の高校演劇部は、全国大会を目指して、毎年夏から早春にかけて、各地域の大会に参加する。ルールは、上演60分以内、装置の設置と撤去30分以内、キャストとスタッフは在校生に限る。演じる内容は自由で、生徒や顧問が執筆した創作脚本、部員たちの集団創作、プロの劇作家の作品、古典の潤色など様々だ。

拡大2020年夏に高知県で開催されるはずだった高校演劇の全国大会、「こうち総文」演劇部門
 都道府県内の地区大会 → 県大会(加盟校が少ない県は県大会から) → ブロック大会(全国8ブロック)での選考経て、12校が夏の「全国高等学校総合文化祭(総文)」の一環として開催される全国大会に駒を進める(各ブロック最優秀賞1校、加盟校の多い関東ブロックから2校、開催地から1校、ブロック持ち回りプラス枠1校)。3700校余りの野球部から、49校が甲子園に出場できる高校野球の選手権大会より「狭き門」だ。

 全国大会を「夏の甲子園」に例えるなら、毎年3月に行われる春季全国高等学校演劇研究大会(通称「春フェス」)は、「センバツ」にあたるだろう。ここに出場する学校も、各ブロック大会で選ばれる。ブロック大会で最優秀賞を獲得しても、3年生部員は、次年度の夏に開かれる全国大会には出場できない。だが、年度内に開催される春フェスには、ブロック大会と同じキャストで参加できる可能性が高い。

 演劇に順位をつけることが可能か、いぶかる向きもあるだろう。私はコンクールの審査員として高校演劇の世界に関わることが多いのだが、誤解を恐れずに言えば、そのときの審査員が誰なのかによって評価が変わる方が健全だと考えている。

 全国大会を例にとれば、地区、都道府県、ブロックと、演劇の仲間たちに選ばれて、代表となった12作品は、当然のことながら、いずれも優れた作品だ。どの作品にも観客の心を強く突き動かす力がある。それならば、誰の琴線にどれだけ触れるかは、そのときの審査メンバーの顔ぶれ次第である。

 審査員として名を連ねる者もまた、何をどう評価し、どんなコメントを発するのか、キャスト、スタッフ、観客に審査されている。少なくとも、私はそういう覚悟を持ちながら作品を鑑賞し、その作品からどんな刺激を受け取ったかを、作品を創った演劇部員に伝えることばを探している。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

工藤千夏

工藤千夏(くどう・ちなつ) 劇作家、演出家

ニューヨーク市立大学大学院演劇科修士課程修了。1992年「青年団」入団、2003年より演出部に所属し「うさぎ庵」を主宰。『真夜中の太陽』(原案・音楽:谷山浩子)は、15年から劇団民藝版が全国巡演。代表作『コーラないんですけど』の東京公演(ザ・スズナリ)が、19年4月、20年4月と相次いで、緊急事態宣言のため上演中止となった。青森市を拠点にする劇団「渡辺源四郎商店」のドラマターグ、日本劇作家協会高校演劇委員も務める。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

工藤千夏の記事

もっと見る