丹治吉順(たんじよしのぶ) 朝日新聞記者
1987年入社。東京・西部本社学芸部、アエラ編集部、ASAHIパソコン編集部、be編集部などを経て、現在、オピニオン編集部・論座編集部。機能不全家庭(児童虐待)、ITを主に取材。「文化・暮らし・若者」と「技術」の関係に関心を持つ。現在追跡中の主な技術ジャンルは、AI、VR/AR、5Gなど。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
国境を越えるインターネット・ミームの軌跡
この連載第2回で紹介したazumaさんが初音ミクを購入する強い動機になったのはこの動画だ。また、前回紹介した「みくみくにしてあげる♪」は、この「Ievan Polkka」の約半月後に登場したが、その歌詞の冒頭「科学の限界を超えて私は来たんだよ ネギはついてないけどできれば欲しいな」には、この動画の影響が直接表れている。そのほかにも、歌詞や動画にネギを織り込んだ作品がこのあと数え切れないほど投稿されるようになる。
ごく最近の例では、初音ミクたちバーチャルシンガーの文化をベースにした人気スマートフォンゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」の主要登場人物・日野森志歩の上のようなせりふにもさりげなく反映されているといえるかもしれない
ネットを飛び出した現実世界に影響を与えている例としては、2013年以来、毎年恒例になっている初音ミク最大の公式イベント「マジカルミライ」もそれに当たるだろう。コンサートに加えて、初音ミクたちをめぐる創作文化を一堂に展示する祭典的な位置づけだ。海外からの来訪者も、年々増えている。
そのマジカルミライの来場者向け注意事項に、こんな一文がある。
「生ネギの持ち込みはご遠慮ください」
もっとさかのぼれば、2007年冬のコミックマーケット(コミケ)でも同様の禁止事項が生まれていたらしい。