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大坂なおみ選手、清原和博氏──著名人のメンタルヘルスと受診を勧奨される社会

香山リカ 精神科医、立教大学現代心理学部教授

 著名人のメンタルヘルス不全告白が続いている。

 大きな注目を集めたのは、テニスの大坂なおみ選手の“うつ”の告白だ。大坂選手は全仏オープン開幕3日前の5月27日、記者会見に参加しない意向を表明した。そして、1回戦に勝利した後、会見を拒絶。主催者側から日本円にして約165万円の罰金を課せられ、2回戦以降を棄権した。

 会見拒否の時点では「大会が選手のメンタルな状態を無視しているから」とだけ述べた大坂選手だったが、大会の棄権を公表する際、ツイッターで自身のメンタルヘルス不全を告白した。以下は該当する箇所を筆者が和訳したものだ。

 「2018年の全米オープン以降、実は私は長いあいだ“うつの状態”(原文:bouts of depression)に悩まされており、それとのつき合いに苦労してきました」

 「私は、もともとみなさんの前で話すのが得意ではないし、世界のメディアに向かって話す前には巨大な不安の波に襲われます」

 そして、全仏オープンに参加するためパリに来た時点で、すでにおびえや不安に襲われており、自分をケアするためにも会見は避けた方がよい、と判断したと述べている。

/Shutterstock.com拡大「うつの状態に悩まされている」と告白した大坂なおみ選手 lev radin/Shutterstock.com

 大坂選手の“うつの状態”が、どの程度のものなのか、実際に医療的なケアを受けているのか否かなどは明らかにされていないが、なんらかのメンタルヘルス不全状態に陥っていたことは明らかだろう。

 誰もがこのニュースを見て、驚きを禁じえなかったと思う。大坂選手といえば、コート上の力強いプレーだけではなく、BLM(ブラック・ライブズ・マター)の運動に賛同してこれまで犠牲になった黒人の名前をプリントしたマスクを日替わりでつけて会場に現れるなど、「心身ともにタフ」と思われていたからだ。競技において卓越しているだけではなく、ひとりの社会人、ひとりの女性として自分の意思をはっきり表明する態度は、新しい時代のロールモデルともされてきた。だからこそ、「私は不安の波に襲われてきた」「長いあいだ“うつ”に苦しめられてきた」という告白は衝撃的であった。

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筆者

香山リカ

香山リカ(かやま・りか) 精神科医、立教大学現代心理学部教授

1960年、北海道生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。『「いじめ」や「差別」をなくすためにできること』(ちくまプリマー新書)、『人生が劇的に変わるスロー思考入門』(ビジネス社)、『半知性主義でいこう――戦争ができる国の新しい生き方』(朝日新書)など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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