2021年06月25日
皆さんは「楊琳」を知っているだろうか。楊琳と書いて「やん・りん」。
というと「あー、宝塚(歌劇団)みたいなやつね」という程度には知名度はあるかもしれない。では、宝塚歌劇団(以下タカラヅカ)と、OSK日本歌劇団がどう違うのかというのは説明が難しい。「祇園の舞妓と先斗町の舞妓はどう違うか」というようなもので、祇園や先斗町の人にとってまるで違うものであっても、通りすがりの人には同じに見える。舞妓さんといえば祇園。違うのに。そのへんもタカラヅカとOSKの関係に似ている。
ここでは主に「同じに見える」人に向けて、その魅力を語ってみたい、と、OSKの。
OSKはけっこう歴史がある。来年創立100周年である。100年続いてる劇団なんてめったにあるもんじゃない。が、ここまで来るのにたいへんな紆余曲折があり、経営母体はいくつも変わり、途中で親会社に放り出されて解散とか路上で存続署名活動とか、存続したと思ったら民事再生とか、とっくに消滅しててもおかしくないぐらい波瀾万丈なのである。
いろんな劇場やスペースで公演を打っているが、年にいちどの最大の公演が、大阪松竹座と新橋演舞場での『春のおどり』で、今年はそれに加えて、6月に大阪松竹座で『レビュー夏のおどり』があった。それが「新トップスターのお披露目公演」である。
その新しいトップスターこそ「楊琳」。
こういう世界では珍しい本名で、その姓を見てわかる通り、在日華僑の4世。入団15年目の男役だ。
お披露目公演のタイトルは「レビュー夏のおどり『STARt』」。「スター」と「スタート」と「アート」をかけたダジャレタイトルであるがカッコイイので問題ない。
OSKが大阪松竹座で上演するのはレビューである。
タカラヅカはミュージカルやショーだ。ショーは「スターを見せるもの」、レビューは「集団美を見せるもの」だと思う(この定義が正しいかどうかはわからない。OSKとタカラヅカを見て私が感じたことだ)。
タカラヅカはまさにショーであってスターを見せてくださるし、OSKは高速ラインダンス、一糸乱れぬ群舞などで客席を巻き込み、圧倒する。
だからOSKのトップスターは、トップとしての性格がタカラヅカとはちょっと違う。野生のオオカミの群れの中でやがて頭角を現して先頭に立つ、とでも言ったらいいのか(OSKは、男役はもちろん、娘役たちもオオカミのように1匹で立っていて、強い)。そしてその先頭を走るオオカミは、その統率力ゆえに美しい。OSKのトップスターというのはそういう存在だ。
……が、このたびトップお披露目をした楊琳はちょっとタイプが違う。
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