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伊原六花、『ロミオ&ジュリエット』大阪公演取材会レポート

ジュリエットの強さと人間味を伝えられたら

真名子陽子 ライター、エディター


 日本オリジナルバージョンが10周年を迎えたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の東京公演が終了し、いよいよ7月3日から大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演される(7月17日~18日名古屋・愛知芸術劇場大ホールで上演)。

 2001年に生まれたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、シェイクスピアの不朽の名作をもとに、ジェラール・プレスギュルヴィックの名曲の数々で綴られたフレンチ・ミュージカルとして世界20ヶ国以上で上演を重ね600万人以上を動員。日本では2010年に宝塚歌劇団で小池修一郎の演出により初演され、2011年には「日本オリジナルバージョン」として同じく小池修一郎の演出で初めて上演された。10周年を迎える本公演はロミオ役に黒川麻璃央と甲斐翔真、ジュリエット役に伊原六花と天翔愛というフレッシュな顔合わせとなった。

 東京公演が終了した2日後に大阪公演へ向けた取材会が開かれ、“バブリーダンス”で話題となった大阪府立登美丘高等学校ダンス部のキャプテンを務め、現在女優として活躍している伊原六花が出席し、東京公演を終えた感想や大阪公演への意気込みを語った。

新しい発見がたくさんあった東京千穐楽

拡大伊原六花=撮影:岸隆子(Studio Elenish)

――まずは東京公演を終えて、今の感想をお願いいたします。

 千穐楽を迎えるということが初めての経験でしたので、率直にとても幸せでした。千穐楽だからと特別なことをするつもりはなく、いつも通りにできればと思っていましたが、やはりお客さまやキャストの熱量に感化されて。新しい発見がたくさんあった千穐楽でした。

――ジュリエット役に決まった時の感想は?

 「えっ!? あの『ロミオ&ジュリエット』ですか!?」とただただ驚きました。ビジュアル撮影やお稽古が始まるまで実感がわかないくらいでした。小池修一郎さん演出の『ロミオ&ジュリエット』は以前から知っていましたので、いつか関わることができればいいなと思う作品でしたが、このタイミングでジュリエット役を演じさせていただけることは本当にうれしかったです。

――ミュージカル初出演についてはいかがでしたか?

 やはり未知なことが多く、お芝居や歌などゼロからスタートする事ばかりでした。ただ昨年、公演は中止になってしまいましたが『ウエスト・サイド・ストーリー』マリア役のお稽古で培ったものをいかせればとも考えていました。「ロミオとジュリエット」を元にした作品が『ウエスト・サイド・ストーリー』ということもあり、ジュリエットとマリアに何か通じることがあるのはないかと、試行錯誤しながらお稽古を進めました。その経験があったからこそ、初めてのミュージカルでしたがいろんな角度でジュリエット役を掘り下げられたんじゃないかなと思います。

――ジュリエット役の役作りで大切にしていたことは?

 とにかく強さを意識しました。ジュリエットは可憐でお嬢様で品があるイメージでしたが、シェイクスピアの戯曲を読むと、その中の言い回しから新たな発見がありました。乳母への態度やロミオへの愛に突き進む行動力は想像以上に熱量が大きく、そして自分の意志がはっきりある女の子だなと感じました。今回私がジュリエットを演じる上では、その強さと人間味を伝えられたらと思っています。

発声を一から教えてもらった

拡大伊原六花=撮影:岸隆子(Studio Elenish)

――好きなシーンと好きな楽曲を教えてください。

 うわ~、どうしよう!? 全部好きなのですが、ひとつあげるとしたら二幕の最後、霊廟のシーンです。ジュリエットが抱く希望との落差がはっきりとわかるシーンなんです。今回の演出では、二人がいる霊廟の真上に十字架があり、そこに“死”がひそんでいるのですが、その影がちょうどロミオとジュリエットにかかるんです。神秘的な空間にいろんな感情が重なり合う、とても好きなシーンです。

 楽曲ももちろん全部好きなのですが、二幕の冒頭で歌われる「街に噂が」が大好きです。結婚式を挙げ、「エメ」を歌って一幕を終えたあと、結婚したロミオがみんなに責められて問われるシーンで歌われるのですが、ロミオとモンタギューのみんなの歌詞が、真逆の意味なんです。でもちゃんとそれぞれに理由があって言い合うところがとても素敵な曲だなと感じています。

――幼い頃からミュージカルを習われていたそうですが、女優として初めてミュージカルに出演することで、心構えなど違う点はありましたか?

 子どもの頃に出演していたミュージカルは、習い事という感覚が強く純粋に楽しんでやっていました。今回は、お仕事として出演させていただき、発声を一から教えていただきました。地声で歌う曲が多く、いかにお芝居の流れのまま歌えるかといったことや、大劇場での発声、ミュージカルでの発声法などが課題としてありましたので、たくさん練習しました。そこが大きな違いだと思います。

まったく違うWロミオの魅力

拡大『ロミオ&ジュリエット』公演から=提供:ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局 Ⓒ岡本隆史

――Wキャストのロミオ役それぞれの魅力や違いを教えてください。

 お二人ともまったく違うんです! 黒羽さんのロミオは圧倒的な無邪気さと繊細さが共存しているという印象です。本当に血の通ったロミオがそこにいるんだと感じるお芝居をされて、毎公演違う感情の流れでお芝居をしてくださり、引っ張ってくださって空気感を作ってくださる方です。キラキラして無邪気に見えるところと、繊細な部分が一人の人間の中におさまっているところが素敵だなと思います。

 甲斐さんのロミオは、とても自由で自分の流れに周りを巻き込んでいかれる印象です。この人が巻き起こす波に寄り添っていけば、ジュリエットとして生きられるという安心感があります。一緒にお芝居をしていると『ロミオ&ジュリエット』のヴェローナの世界が壮大に広がっていく感覚があります。お二人の魅力が全然違いますので、一緒にお芝居をしていてとても楽しいです。

――演出の小池修一郎さんから、ジュリエット役についてどのようなアドバイスがありましたか?

 小池先生には稽古中から「もっと強く、もっと強く」と言っていただきました。ただその強さのバランスがとても難しくて、一つ間違えると単におてんばで、周りの大人の言うことに反発する、狭い視野の中で自分の意思を貫いてしまう印象になりますし、でも可憐さを意識し過ぎると、最後の霊廟のシーンでロミオが毒を飲んだことを知った瞬間の、あの行動をとる説得力に欠けてしまう気がします。そのバランスを自分の中で調整しながら、小池先生からは「ここはもっと強さが見えても大丈夫」「ここは抑えて」といった細かいバランスを、たくさん指導していただきました。

ダンスしか見えていなかった16歳

拡大伊原六花=撮影:岸隆子(Studio Elenish)

――先ほど東京公演の千穐楽で新たな発見があったということですが、どのような発見があって、今後どういう風に活かしていきたいと思っていますか?

 どれだけ感情と歌を繋げられるかということを課題にしていたのですが、初日はとても緊張していて、歌を歌っていますという感覚だったんです。でも公演を重ねるごとに感情と歌が結びつくってこういうことなんだと、パッと世界が広がる瞬間が何回かありました。そういう感覚が徐々に増えていき、千穐楽ではその感覚を一番多く感じることができたので、もっとできるんじゃないかと思っています。大阪公演では感情で動くメロディや言葉の抑揚を大事にして、さらにパワーアップしたものをお見せできればと思っています。

――地元大阪での公演になります。何かやりたいことはありますか?

 ありがたいことに初日から千穐楽まで、家族やダンス部のメンバー、後輩などたくさんの方が観に来てくれます。これまでもライブ配信で映像を通して見てくれていましたが、生の舞台を観てもらうのは初めてなので、とても緊張しています。でも、みんなに見てもらえることをとてもワクワクしています。やりたいことですが、これは叶わないことなのですが、本当は公演が終わった後に直接会って感想を聞きたいです。観終わった後のみんなのテンションを感じられたらよかったなと思います。でも今は、お客様に作品を届けられることが一番幸せなので、大千穐楽までしっかりと努めたいと思っています。

――ジュリエットは16歳ですが、16歳の伊原さんはどんな人でしたか?

 ダンスにしか興味のない高校生でした。ジュリエットにとってのロミオが、私にとってのダンスでした(笑)。もうダンスしか見えていなかったです。ちょうどダンス部で世代交代をしてキャプテンになった年で、今よりも周りを見て行動していたように思います(笑)。キャプテンとしての責任感を感じながら、ダンスに対して全力で本気で取り組んでいて、ダンスがすべてでした。

歌、ダンス、お芝居とオールマイティに活躍できる女優に

――今後、女優としての目標を教えてください。

 今回舞台に立って、LIVEの熱量は素晴らしいなと感じました。ミュージカルをはじめ、ストレートプレイや映像作品などまだまだ勉強したいことがたくさんあります。歌、ダンス、お芝居と多方面でオールマイティに活躍できる女優になりたいという目標を持って上京しました。今回、初めてミュージカルに出演させていただいて、その思いが一層強まったと思います。

――最後にメッセージをお願いいたします。

 東京公演では回を重ねるごとにカンパニーの熱量があがり、より世界観が濃くなるのを感じました。東京公演を終えて少し時間が空きますので、作品や役について考える時間があります。私も含め各々が整理して大阪公演に挑むと思いますので、また違ったカンパニーの色を見せられるのではないかと思います。私個人としては地元の大阪で初めてミュージカルをお見せできることにすごくワクワクしています。楽しみにしていただいている方に最高の『ロミオ&ジュリエット』をお届けできるようにさらにがんばりたいです。大千穐楽まで走り抜けたいと思っています。本当に素晴らしいカンパニーで、熱量の高い作品になっていますので、ぜひ観に来ていただけるとうれしいです。よろしくお願いいたします。

◆公演情報◆
拡大ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
東京:2021年5月21日(金)~6月13日(日)  TBS赤坂ACTシアター
大阪:2021年7月3日(土)~7月11日(日)  梅田芸術劇場メインホール
名古屋:2021年7月17日(土)~7月18日(日)  愛知県芸術劇場 大ホール
公式ホームページ
公式twitter
公式YouTube
[スタッフ]
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)
[出演]
黒羽麻璃央/甲斐翔真(Wキャスト)、伊原六花/天翔愛(Wキャスト)、味方良介/前田公輝(Wキャスト)、新里宏太/大久保祥太郎(Wキャスト)、立石俊樹/吉田広大(Wキャスト)、
春野寿美礼、原田薫、石井一孝、宮川浩、秋園美緒、兼崎健太郎、岡幸二郎、松村雄基
小㞍健太/堀内將平(Kバレエカンパニー)(Wキャスト) ほか
 
★黒羽麻璃央&甲斐翔真のロミオ対談はこちら
★立石俊樹&吉田広大のティボルト対談はこちら
★『ロミオ&ジュリエット』東京公演レポートはこちら

筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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