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陛下と雅子さまの五輪への懸念と奨励は、正直パワーという広報戦略

矢部万紀子 コラムニスト

真面目さが広報の妨げになっていた

第35回国民文化祭・みやざき2020と第20回全国障害者芸術・文化祭みやざき大会の開会式にオンラインで出席した天皇、皇后両陛下=2021年7月3日午後3時、赤坂御所、宮内庁提供拡大第35回国民文化祭・みやざき2020と第20回全国障害者芸術・文化祭みやざき大会の開会式にオンラインで出席した天皇、皇后両陛下=2021年7月3日、赤坂御所、宮内庁提供

 陛下というより、陛下と雅子さまのお二人は、広報が苦手だと思っていた。始まりは平成、雅子さまの適応障害という病にある。なぜ公務はできないのに、外出はできるのか。子育てばかり優先しているではないか。そんな批判が力を得ていた。それに対し、お二人はほとんど沈黙していた。雅子さまの回復を最優先していたのだと今なら思えるが、当時は病気のことをわかった上で、国民にわかりやすく説明する広報が必要なのに、と歯痒い思いがしていた。

 真面目だからなのだ。そう思うようになったのは、平成から令和への代替わりの頃だ。雅子さまの公務が増え、その表情はどんどん明るくなった。回復が明らかになり気づいたのが、お二人の好きな言葉「研鑽」だった。平成最後のお誕生日(2018年12月9日)にあたって雅子さまが文書の中で使い、陛下は即位後朝見の儀の「おことば」で使った。努力の先にまだある努力。そんな感じがして、お二人は似た者夫婦なのだと思ったりした。

 が、広報という点から見ると、これが妨げになっているのだなと感じていた。はみ出したり、自分を見せたりすることは、良くないこととお二人は感じている。それが真面目さとわかっても、心をグッとつかまれる感じにはならない。

 その典型が、新型コロナウイルスへのメッセージだ。最初の緊急事態宣言が出た2020年4月から期待する声もあったが、陛下がそれを公表したのは21年1月1日。例年なら「新年のご感想」(1日)が公表され、一般参賀(2日)で「おことば」を述べる。一般参賀がコロナ禍で中止になったことに合わせ、「ご感想」のタイミングでの公表とする。その説明を知って、しみじみとした気持ちになった。

 憲法は天皇について、「国政に関する権能を有しない」と定めている。天皇の“命令”で戦争を招いたという反省からの「国民主権」があり、天皇は政治的事項に関わらない。事はウイルスだが、陛下は憲法に忠実と決めたのだろう、なんて真面目なのだと改めて思ったのだ。

 メッセージもそうだった。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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