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イヤホンと第九と船頭小唄 その1

【38】ベートーベン「よろこびの歌」、「船頭小唄」

前田和男 翻訳家・ノンフィクション作家

疫病蔓延下でも音楽は活況の日本

 かたや百年前の日本はどうだったのか。『内務省(現・総務省)報告書』によると、1918〜1920年の3年間に、当時の人口5720万人の41.6%にあたる2380万人が感染、0.7%にあたる約39万人が死亡したとされたにもかかわらず、先に述べたように、欧米とは真逆で、音楽は「放任」された。いやそれどころか、「放任」によって、この絶望の3年間に、むしろ巷間には歌声の「活況」がもたらされたのであった。

拡大島村抱月
 『新版日本流行歌史 上』(社会評論社)には、往時流行したとされる楽曲が年代順にリストアップされているが、それによると、1917年は『コロッケの唄』『さすらいの唄』など8曲に対して、スペイン風邪の第一波が襲いかかった1918年は『のんき節』『宵待草』など9曲、第二波の翌1919年は『浜千鳥』『別れの唄』など18曲、第三波の1920年は『叱られて』『十五夜お月さん』など11曲、厄災がほぼ収束をみせた1921年は『赤い靴』『船頭小唄』など14曲が挙げられている。現在のようにオリコン売上による「定量的比較」ではないので断定はできないものの、往時の日本の音楽業界は、少なくとも欧米のような「停滞」にはなく、「活況」にあった
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筆者

前田和男

前田和男(まえだ・かずお) 翻訳家・ノンフィクション作家

1947年生まれ。東京大学農学部卒。翻訳家・ノンフィクション作家。著作に『選挙参謀』(太田出版)『民主党政権への伏流』(ポット出版)『男はなぜ化粧をしたがるのか』(集英社新書)『足元の革命』(新潮新書)、訳書にI・ベルイマン『ある結婚の風景』(ヘラルド出版)T・イーグルトン『悪とはなにか』(ビジネス社)など多数。路上観察学会事務局をつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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