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イヤホンと第九と船頭小唄 その2

【39】ベートーベン「よろこびの歌」、「船頭小唄」

前田和男 翻訳家・ノンフィクション作家

日本人よりも感染・死亡率が高かったドイツ人捕虜

 さて、ここからが本題である。

 人道的な物語として語り伝えられてきた「第九」だが、私からすると、その麗しきエピソード」には大いに疑念と異議がある。

 ちなみに徳島県鳴門の「板東俘虜収容所」では、第一波に襲われた1918年末のわずか25日間で、ドイツ人捕虜の3分の2にあたる678人が感染、そのうち3人が死亡。また、最大時で1000人の捕虜がいた東の千葉県の「習志野俘虜収容所」でも同様の事態がおきている。1915年から4年間同所に収容されていた海軍兵士のエーリッヒ・カウルの日記がコロナ禍をきっかけに千葉県日独協会によって発掘・翻訳されたが、1919年1月28日には、次の記述がある。

 「今日のような日曜日は二度と経験することはないであろう。およそ6日前から収容所でインフルエンザが大流行している。今日の状況をみるとこの病気は頂点に達した。およそ650名の兵士が床についている。(略)1名の兵士が今日衛戍病院で死んだ」
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筆者

前田和男

前田和男(まえだ・かずお) 翻訳家・ノンフィクション作家

1947年生まれ。東京大学農学部卒。翻訳家・ノンフィクション作家。著作に『選挙参謀』(太田出版)『民主党政権への伏流』(ポット出版)『男はなぜ化粧をしたがるのか』(集英社新書)『足元の革命』(新潮新書)、訳書にI・ベルイマン『ある結婚の風景』(ヘラルド出版)T・イーグルトン『悪とはなにか』(ビジネス社)など多数。路上観察学会事務局をつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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