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つかドラマ、成功の秘密は「臆さない注文」

『つかこうへいのかけおち'83』⑦

長谷川康夫 演出家・脚本家

つかは驚くほど素直で潔かった

 『かけおち'83』ではリハーサルを経る中で、撮影段階の「決定稿」に至るまで、改訂された台本が何稿か新しく印刷された。松岡によると、この手のテレビドラマでは異例のことだったという。

拡大NHKディレクターの松岡孝治。大河ドラマ『毛利元就』や『大地の子』など、数々のドラマを演出した=1996年撮影
 もちろんそれは、つかが〝口立て〟稽古によって、脚本に様々な形で手を加えていくからだったが、そんなつかの進めるドラマの展開を、村上や松岡たちがやすやすと納得せず、途中途中で幾度か変更を求めたためでもあった。

 そしてそんな彼らからの要求があると、つかはいらだちを見せることもなくじっと考え、ほとんど受け入れてみせた。それはちょうど、映画『蒲田行進曲』の初稿に対し、監督の深作欣二から要望や提案をこまかく書き連ねた手紙が届いたとき、すべてそのままに書き直したのとよく似ていた。

 いかにも傲慢で、他人の意見を聞く耳など持たないように思われがちのつかだが、相手の力量を認め、自分にはないものがあると判断したときの対応は、驚くほど素直でいさぎよい。そしてそうなったとき、さらなる力を発揮するのがつかこうへいだった。

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筆者

長谷川康夫

長谷川康夫(はせがわ・やすお) 演出家・脚本家

1953年生まれ。早稲田大学在学中、劇団「暫」でつかこうへいと出会い、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』などのつか作品に出演する。「劇団つかこうへい事務所」解散後は、劇作家、演出家として活動。92年以降は仕事の中心を映画に移し、『亡国のイージス』(2005年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞。近作に『起終点駅 ターミナル』(15年、脚本)、『あの頃、君を追いかけた』(18年、監督)、『空母いぶき』(19年、脚本)などがある。つかの評伝『つかこうへい正伝1968-1982』(15年、新潮社)で講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞を受賞した。20年6月に文庫化。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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