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結婚披露宴を自作自演したつかこうへい

『つかこうへいのかけおち'83』⑧

長谷川康夫 演出家・脚本家

結婚式にかけた、つかの情熱

 つかこうへいと生駒直子の結婚式は、1983年の4月24日、つかの誕生日に行われた。僕の記憶は少々曖昧だったので、直子本人に確認している。

 昼過ぎにカトリック神田教会で挙式し、そこから芝の東京プリンスホテルに場所を移して、夜が披露宴だったと思う。

 東プリ最大の宴会場に数百人の参列者が集う大パーティーだったが、そんな一日限りのイベントにかけるつかの意気込みは、並々ならぬものがあった。そう言い切れるのは、そこでの司会を僕が務めたからだ。

 役目を言い渡されたのはごく早い時期で、準備を進めるつかとの打ち合わせは長い期間に及んだ。

 開会の挨拶から、司会者としての自己紹介、以下、会を進行する台詞などが、すべてつかから〝口立て〟で伝えられ、そこに僕がさらに細かく言葉を足していくという連日の作業は、あたかも芝居の稽古場そのままだった。違うのは、他に誰もいない一対一の関係で行われたことだ。

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筆者

長谷川康夫

長谷川康夫(はせがわ・やすお) 演出家・脚本家

1953年生まれ。早稲田大学在学中、劇団「暫」でつかこうへいと出会い、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』などのつか作品に出演する。「劇団つかこうへい事務所」解散後は、劇作家、演出家として活動。92年以降は仕事の中心を映画に移し、『亡国のイージス』(2005年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞。近作に『起終点駅 ターミナル』(15年、脚本)、『あの頃、君を追いかけた』(18年、監督)、『空母いぶき』(19年、脚本)などがある。つかの評伝『つかこうへい正伝1968-1982』(15年、新潮社)で講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞を受賞した。20年6月に文庫化。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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