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フェミニスト手芸グループ山姥に聞く「サヴァイヴでレジスタンス」な行為

丹野未雪 編集者、ライター

「あ〜、私もそういうの好き」

──山姥さんの作品は、こう言ってはなんですが少々「ガラが悪い」ですよね。パンクのような破壊力があって自由を感じるし、痛快で楽しい。そこには刺繍の持ち味もありつつ、日本語がストレートに使われていることも大いに関係しているように思うのですが、躊躇することはありませんでしたか?

かんな ありますよ。以前、長島友里枝さんに「あばずれ」って刺繍したバッジをあげたんです。長島さん、それを付けてコンビニかなんかに行ったら、おじさんに「あばずれだって〜(笑)」と笑われることがあったみたいで。振り返ったらおじさんの方がビビってしまったみたいなんですけど、でもやっぱり強い言葉を使うっていうのはそうやって誰かから意図しないアプローチを受ける可能性もあるんだなと思いました。つけはずしのできるバッジを多く作ってるのは、自分の安全や気持ちによってメッセージを表明できる日とそうでない日を切り替えてほしいなということもあります。

=提供・山姥拡大提供・山姥
=提供・山姥拡大提供・山姥

──かんなさんが作成している「フェミバトルジャケット」には、背中の最も目立つ位置に「個人的なことは政治的なこと」と縫われていますね。どういった場所で着用しているのでしょうか?

かんな 私の中であれは完全に特攻服なので、ウィメンズマーチとか、そういう気合が入るところへ着て行きます。意外に街中で着てても怪しまれず、今のところ絡まれたことはないです。あんまりフェミニズムのメッセージとしては世間的に捉えられてないのかな。

=提供・山姥拡大かんなさんの“特攻服”「フェミバトルジャケット」。今後、さらに手が加わっていくという=提供・山姥
=提供・山姥拡大提供・山姥

──確かに、特攻服には刺繍が欠かせない。

マルリナ 刺繍は正解も不正解もないっていう感じが好きです。

かんな オリジナルな図案だと下手なのがばれない(笑)。みんな本当はやりたいんですよね。この間、読書会に来てくれた人が「フェミニズム」「手芸」って検索したら山姥に行き着いたって言ってたし。

マルリナ 職場で休憩時間に縫い物してると、「あ〜、私もそういうの好き」って声かけられるんですよね。この前、デニーズで二人で手芸やってたら、隣の席のおばちゃんが「私、そういうの好きなの」って話しかけてきたし。

──かつて洋裁や編み物といった手芸は「花嫁修業」の一つでもあり、現在60代以上の女性には広く親しまれていたので、そのおばちゃんもそうした世代かもしれないですね。母親世代の手芸作品は「おかんアート」と呼ばれ、レトロでキッチュ、人畜無害な趣味とみなされていますが。

かんな 『現代手芸考──ものづくりの意味を問い直す』(上羽陽子、山崎明子著、フィルムアート社)を読んだ時に、昔はドアノブとか電話を編み物で作ったカバーで飾り付けしていたと書いてあって。それは彼女たちにとって、レジスタンスというか、

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筆者

丹野未雪

丹野未雪(たんの・みゆき) 編集者、ライター

1975年、宮城県生まれ。ほとんど非正規雇用で出版業界を転々と渡り歩く。おもに文芸、音楽、社会の分野で、雑誌や書籍の編集、執筆、構成にたずさわる。著書に『あたらしい無職』(タバブックス)、編集した主な書籍に、小林カツ代著『小林カツ代の日常茶飯 食の思想』(河出書房新社)、高橋純子著『仕方ない帝国』(河出書房新社)など。趣味は音楽家のツアーについていくこと。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです