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荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』──兌換紙幣の言葉と不換紙幣の言葉

大槻慎二 編集者、田畑書店社主

 言葉には「兌換紙幣」の言葉とそうでないものがある、と教えられたのは作家の小川国夫さんからだった。リアリティーがある、というのとも違う。その言葉を持っていけば、具体的なモノと交換できる。モノは物体であってもいいし感情であってもいい。また状況でも思想でも構わない。そういう意味である。

 荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)を読んでいて、しきりに頭に浮かんだのはそのことだった。

 まず惹かれたのは〈まえがき 「言葉の壊れ」を悔しがる〉の冒頭、次のような文章だった。

「言葉が壊れてきた」と思う。いや、言葉そのものが勝手に壊れることはないから、「壊されてきた」という方が正確かもしれない。

荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)拡大荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)
 このことは、ここ10年ほどの間、誰もが(ではないか)、少なくとも「この国」が壊れていくことを肌身に感じてきた者にとっては、共通の認識ではないだろうか。そしてその原因の一端、というよりもはっきり元凶と言っていいのは、間違いなく「為政者の言葉」の壊れ具合にある。有体に言ってしまえば、もし日本に安倍・菅政権が存在しなかったとしたら、こうはならなかっただろうことである。

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筆者

大槻慎二

大槻慎二(おおつき・しんじ) 編集者、田畑書店社主

1961年、長野県生まれ。名古屋大学文学部仏文科卒。福武書店(現ベネッセコーポレーション)で文芸雑誌「海燕」や文芸書の編集に携わった後、朝日新聞社に入社。出版局(のち朝日新聞出版)にて、「一冊の本」、「小説トリッパー」、朝日文庫の編集長を務める。2011年に退社し、現在、田畑書店社主。大阪芸術大学、奈良大学で、出版・編集と創作の講座を持つ。フリーで書籍の企画・編集も手がける。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです