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小山田圭吾問題で思う、大谷翔平の81マスと自分を見つめる目

矢部万紀子 コラムニスト

「目標達成シート」は自分を見つめるためのもの

 どういうシートなのか、相沢さんはこう書いていた。<シートには9×9の合計81個のマス目が書かれている。まず中心にあるマスに自分が達成したい「大きな目標」を記入する。そのマスを取り囲む8つのブロックには、その目標達成に必要な要素を埋める>。その8つの要素を一つずつ取り出し、それを達成するためにすべきことを外側の8マスに書く。そうして81が埋まり、それを実行すると「大きな目標」が達成できる。そういうシートだ。

 大谷シートは以前から有名なようで、別のサイトには自筆の画像が報じられていた。正統派のきれいな文字で、81マスが丁寧に埋められている。真ん中の「大きな目標」は「ドラ1 8球団」。ドラフト1位で8球団から指名される。そんな将来を、高校1年生の大谷選手は見据えていた。

プロ野球志望届を書く大谷翔平選手=2012年9月、花巻市の花巻東高校拡大プロ野球志望届を書く高校時代の大谷翔平選手=2012年9月
 それを達成するための8マスは、「体づくり」「コントロール」「キレ」「スピード160㎞/h」「変化球」、そして「メンタル」「人間性」「運」。ちなみに見出しになった「夜7杯、朝3杯」は「体づくり」を達成するための要素だ。

 このマンダラチャート、知らなかったがビジネスの世界でもよく使われているようだ。「思考が整理できる」と効用が謳われ、ネット上には無料でダウンロードできるPDFもある。

 個人的なことだが、「目標達成シート」は大の苦手だ。1983年に会社員になり適当に働いていたが、21世紀になると「目標を紙に書いて提出せよ」と命じられるようになった。会社に申し上げずとも、好きに働かせていただきます。それが蓄積されたものが「利益」なのだから、タガをはめてくれるな。それが我が「苦手」の論理だが、コンサルティング会社の人などが知ったら、だからこの会社はダメなんだとあきれるだろう。心でぶつぶつ言っていたら、目標達成シートはすぐに「振り返り」とセットになった。「目標未達」となると、シートが叱られる材料に。そんなの、嫌いだ──。

 が、大谷選手のマンダラチャートを見て、考えを変えた。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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