映画『パンケーキを毒見する』を大学生が見たら──河村光庸氏との対話
学生は、現実をターゲットにした映画を待っている
古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)
7月30日公開のドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』の「企画・製作・エグゼクティブプロデューサー」は河村光庸氏。彼は政権に立ち向かう記者を描いた劇映画『新聞記者』(藤井道人監督)が日本アカデミー賞最優秀作品賞などを取り、その原案を書いた東京新聞・望月衣塑子記者のドキュメンタリー『i―新聞記者ドキュメント─』(森達也監督)では東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門で作品賞を取った。最近は『宮本から君へ』(真利子哲也監督)で内定した製作助成金を、麻薬取締法違反で有罪となったピエール瀧が出ているという理由で取り消した日本芸術文化振興会に勝訴するという、飛ぶ鳥を落とす勢いの「反権力」の人である。

映画『パンケーキを毒見する』の「企画・製作・エグゼクティブプロデューサー」河村光庸氏=日本大学芸術学部、筆者提供
私が教える日本大学芸術学部(日芸)には「芸術総合講座」という、どの学科の学生にも開かれた講義がある。各分野の第一線で活躍する方々に毎週日替わりで登壇いただく形式だが、「映像ビジネス」を担当する私は、「話題の人」として5月に河村氏に来てもらった。彼に声をかけたのは『新聞記者』の藤井監督が日芸出身ということもあった。その講義が盛り上がったためか、後日河村氏から日芸で『パンケーキを毒見する』の試写をやりたいと連絡があった。

『パンケーキを毒見する』 7/30(金)より東京・新宿ピカデリーほか全国公開 配給:スターサンズ ©2021『パンケーキを毒見する』製作委員会
私は実は少し心配だった。政治を扱ったドキュメンタリーを果たして日芸の学生が見に来てくれるだろうか。この映画はテレビ的なわかりやすい演出だが、受け入れられるだろうか。それ以前に「緊急事態宣言」が出そうだが、大学はこの学内イベントを許可するだろうか。
結果として「宣言」は出たが、7月15日、大きなスクリーンのある上映用の地下教室で、事前予約制にして定員の半分の学生約70人に見せることができた。上映後の河村氏とのトークも含めて予想以上の熱い反応があった。