山口宏子(やまぐち・ひろこ) 朝日新聞記者
1983年朝日新聞社入社。東京、西部(福岡)、大阪の各本社で、演劇を中心に文化ニュース、批評などを担当。演劇担当の編集委員、文化・メディア担当の論説委員も。武蔵野美術大学非常勤講師。共著に『蜷川幸雄の仕事』(新潮社)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
英国デヴィッド・ヘア作の一人芝居『悪魔をやっつけろ』/燐光群が上演
英国の大御所劇作家、デヴィッド・ヘアが、自身がコロナウイルスに感染して苦しんだ体験をもとに一人芝居『悪魔をやっつけろ(BEAT THE DEVIL)』を書いた。
「なにもかもドブみたいな味がする」
そんな告白から始まるこの演劇は2020年8月、ロンドンで初演された。コロナ禍で閉鎖されていた劇場が再開してすぐのブリッジ劇場で、演出はニコラス・ハイトナー、出演はレイフ・ファインズ。劇場収容人数900を250席に減らしての公演だった。
内容は、2020年3月にコロナを発症し、「さまざまな症状が手当たり次第に起きた」という72歳の劇作家が、実際に味わった苦痛の生々しい記録だ。同時に、英国政府への痛烈な批判であり、未知の病と向き合う人間についての考察でもある。
多彩な要素が盛り込まれた1時間ほどの一人語り。この戯曲のリーディング上演を、劇団「燐光群」が始めた。翻訳は常田景子。ヘアと同じ劇作家である坂手洋二が演出し、出演もする。
「起きたばかりの事件を、みんなが集まる広場で語る。演劇にはそんな機能もある。トランク一つ提げて、あちこちへ行って話を聞いてもらう。そんな上演にしたい」と坂手は話す。
『悪魔をやっつけろ〜COVIDモノローグ〜』
作者のデヴィッド・ヘア(1946年生まれ)は『スカイライト』『エイミーズ・ビュー』などの舞台劇を数多く執筆し、映画『めぐりあう時間たち』『愛を読むひと』の脚本などでも知られる。演出のニコラス・ハイトナー(56年生まれ)は英国ナショナルシアターの前芸術監督。演じたレイフ・ファインズ(62年生まれ)は、映画『イングリッシュ・ペイシェント』『シンドラーのリスト』などのほか、「ハリー・ポッター」シリーズの「闇の帝王ボルデモート卿」役などでもおなじみの人気俳優だ。
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