メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

大御所劇作家、コロナ感染の体験をつづる

英国デヴィッド・ヘア作の一人芝居『悪魔をやっつけろ』/燐光群が上演

山口宏子 朝日新聞記者

実体験もとに、コロナ闘病モノローグ

 英国の大御所劇作家、デヴィッド・ヘアが、自身がコロナウイルスに感染して苦しんだ体験をもとに一人芝居『悪魔をやっつけろ(BEAT THE DEVIL)』を書いた。

 「なにもかもドブみたいな味がする」

 そんな告白から始まるこの演劇は2020年8月、ロンドンで初演された。コロナ禍で閉鎖されていた劇場が再開してすぐのブリッジ劇場で、演出はニコラス・ハイトナー、出演はレイフ・ファインズ。劇場収容人数900を250席に減らしての公演だった。

 内容は、2020年3月にコロナを発症し、「さまざまな症状が手当たり次第に起きた」という72歳の劇作家が、実際に味わった苦痛の生々しい記録だ。同時に、英国政府への痛烈な批判であり、未知の病と向き合う人間についての考察でもある。

 多彩な要素が盛り込まれた1時間ほどの一人語り。この戯曲のリーディング上演を、劇団「燐光群」が始めた。翻訳は常田景子。ヘアと同じ劇作家である坂手洋二が演出し、出演もする。

 「起きたばかりの事件を、みんなが集まる広場で語る。演劇にはそんな機能もある。トランク一つ提げて、あちこちへ行って話を聞いてもらう。そんな上演にしたい」と坂手は話す。

坂手洋二が演じる『悪魔をやっつけろ〜 COVIDモノローグ〜』(デヴィッド・ヘア作)=姫田蘭撮影

『悪魔をやっつけろ〜COVIDモノローグ〜』
 
レイフ・ファインズ
 作者のデヴィッド・ヘア(1946年生まれ)は『スカイライト』『エイミーズ・ビュー』などの舞台劇を数多く執筆し、映画『めぐりあう時間たち』『愛を読むひと』の脚本などでも知られる。演出のニコラス・ハイトナー(56年生まれ)は英国ナショナルシアターの前芸術監督。演じたレイフ・ファインズ(62年生まれ)は、映画『イングリッシュ・ペイシェント』『シンドラーのリスト』などのほか、「ハリー・ポッター」シリーズの「闇の帝王ボルデモート卿」役などでもおなじみの人気俳優だ。

証言積み重ね、現実掘り下げる演劇

 デヴィッド・ヘアは、実際に起きた出来事を描くドキュメンタリー演劇をいくつも作ってきた。多くの人の証言を構成してゆく「バーベイタム・シアター(Verbatim theatre)」「報告劇」と呼ばれる作品群だ。

・・・ログインして読む
(残り:約1885文字/本文:約2831文字)