はしゃがず涼しい「自意識些少パワー」
2021年08月02日
「意識高い系」とは、どうやら「やる気はあるけど空回りしている」とか「過度に自分を演出するけれど中身がない」とか、人を揶揄する時に使う言葉らしい。だとすれば、それではない。が、意識は高い。そうだ、「高い意識系」という表現はどうだろう。
と、何の話かといえば、テレビ朝日系の「大下容子ワイド!スクランブル」(月〜金、10時25分〜13時)だ。2週間ほど、集中して見た。はやりに乗るなら、ゴン攻め。「独自路線でいく」という気概と、路線への確信からくる様式美、それを支える大下容子さんというアナウンサーの「自意識些少パワー」が伝わってきた。その3つが重なっての「高い意識系」。そう認定した。
ゴン攻めのきっかけは、<勝負を捨てた「ワイド!スクランブル」が報道番組のなかで一番輝いて見えるワケ>という記事(7月6日、現代ビシネス)だった。裏番組が坂上忍さん(フジテレビ系)や南原清隆さん(日本テレビ系)や恵俊彰さん(TBS系)とタレントキャスター揃いなのに、大下さんは局アナ。「ワイド!」前後の番組(「じゅん散歩」と「徹子の部屋」)は完全にシニア狙い。前後左右からいっても勝負に出にくく、それを逆手に「やりたいことをやる」方針でいったことが成功につながった──そんな内容だった。
記事中、目が釘付けになったのが「大下さんはテレビ朝日で丸川珠代五輪相と同期だった」という指摘。筆者の鎮目博道さんはテレビ朝日出身のテレビプロデューサー、ライターで2人の1年先輩。<大下さんは入社した時から、同期である丸川珠代五輪相と常に比較され「丸川は華があるが、大下は地味」と言われ続けてきた人だ>とあった。
会社は違うが私は、1993年入社の2人の10年先輩にあたる。長く組織に属した者として、丸川さんについては思うところが多い。彼女を見ると「結局、えらくなるのはこういう女性ね」と軽い絶望に襲われる。彼女の喜々として「長いもの」に巻かれる様子を見ると、求められる能力のありかを思い知らされ、そういう女性が登用されて「女性活躍の一丁上がり」になってしまう無念さが込み上げる。
丸川珠代さんが「アンチ竹中平蔵」から「アジアンビューティー」へ至る道
そんな彼女と比較されてきた大下さんが、冠番組を持っている。俄然、興味を持ち、ゴン攻めした。
それで感じた「独自路線」への気概。説明がわりに「ワイド!スクランブル」を見て知ったことを、ランダムに並べてみる。
・米軍が撤退したアフガニスタンでタリバンが勢いを増しているが、彼らは選挙というものを否定している(7月12日放送)。
・金融産業の破綻から経済が行き詰まったレバノンでは、2020年8月の爆発事故が追い討ちをかけ、内閣不在が11ヶ月続いている(同22日放送)。
・中国の謝鋒外務次官と会談した米国のウェンディ・シャーマン国務副長官(72)は、粘り強い交渉スタイルから「白髪の魔女」と呼ばれている(同27日放送)。
すべて、午後の「NEWSドリル」というコーナーで学んだ。国内ネタも取り上げるが、「“自民党王国”山口県で事実上の分裂」(同15日放送)のように、他の番組はメインで扱わないようなテーマが多い。7月29日現在、五輪のメダルラッシュなど、このコーナーは目もくれない。
感心したのは、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください