『ジュゼップ 戦場の画家』オーレル監督に聞く
「画家の生きた時代をグラフィックを通じて体感して欲しい」
叶精二 映像研究家、亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京造形大学・東京工学院講師
実在したスペイン人画家ジュゼップ・バルトリ(Josep Bartolí、1910年〜1995年)の半生を綴った長編アニメーション『ジュゼップ 戦場の画家』が8月13日から公開される。時にバルトリ自身の作品を引用したヴィジュアルイメージをはさみつつ、1930年代末から現在までを行き交う力作だ。
1936年7月、スペイン内戦が勃発した。共和国政府とフランコ率いる反乱軍の闘いは長期化し、欧米各国から義勇軍が参加し政府を支援した。1939年2月、共和国政府は敗北し、欧州は一気に第二次世界大戦へと突き進むことになる。
スペイン内戦に敗れフランスに逃れたジュゼップは、強制収容所に入所させられる。そこで死と隣り合わせの暴力と飢えの現実に直面する。収容所には毎日トリコロール(青・白・赤)のフランス国旗が掲揚されるが、実態は正反対の「白と黒の世界」であった。鉛筆1本すら入手困難な中、それでも彼は絵を描き続けた。

『ジュゼップ 戦場の画家』 強制収容所でも絵を描き続けたジュゼップ
スペイン出身でパリで活躍していた画家パブロ・ピカソは、内戦の最中の1937年にドイツ空軍によって行われたスペイン北西部の街ゲルニカの無差別爆撃に抗議し、『ゲルニカ』を描いて反フランコを呼びかけた。巨匠の大作の賛否は欧米で大きな話題となった。
一方、同じ時代を生き延びたジュゼップは日本では無名に等しい。知られざる一人の画家の過酷な体験を通じて欧州史の闇を照らし出すドキュメンタリー的な展開は画期的だ。しかし、本作の魅力はそれだけではない。手描きの線描と色で綴られたアニメーションは、軽やかで美しく新鮮だ。
本作が初の長編演出となったオーレル監督に各シーンや制作意図を伺った。
(作品の内容に一部触れておりますので、ご注意願います)