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『検察側の証人』に出演!成河インタビュー(下)

客席に座る方々を全員共演者にしてしまえる

橘涼香 演劇ライター

『検察側の証人』に出演!成河インタビュー(上)

演劇の難しさがやりやすさに変わっている

──お稽古を共にしている座組の皆さんについてはいかがですか?

 非常に風通しの良いチームになりつつあるなと思います。小川絵梨子さんとこれまで何度も芝居を作ってきた方達もいらっしゃいますし、「はじめまして」の方もいらっしゃるというなかで、それぞれが良いバランスを取れてきていて、ここからさらに自由になっていくのではないかなと思います。

──本当に様々な出自の方が集まっていらっしゃいますね。

 そうなんですが、日本の場合はこの現場に限らず、どこの現場でもほとんど色々な出自の人が集まるんです。プロデュース公演では同じ場所で勉強してきた人たちだけで、ということの方が稀なので、そのなかでフレッシュな方達がいることによって……僕もフレッシュでありたいと思いますが(笑)、そういう方達の存在が刺激になっているなという光景を目にすると、とても良いなと思います。僕も皆さんに刺激を与えていけたらと思っています。

拡大成河=岩田えり 撮影

──またこれは、「ミステリーの女王」と呼ばれるアガサ・クリスティの作品ですが、ミステリー作品ならではの楽しみなどは?

 あぁ~、それなんですけど。ミステリーってそもそもなんなんだろうなと思ったりもします。ミステリー要素のない作品って、逆に言うとないじゃないですか。

──あ、なるほど!

 はじめはわからなかったことがわかっていくという意味では、全ての物語がミステリーだと思うし、それこそが物語の楽しみだと思います。そこを「謎解き」に特化して「謎が解けたぞ!」と言っているだけでは、作品は成立しないですよね。この作品ももしそうなのだったら、ここまで残っていないと思うので、ミステリーだからという意識はしていないですね。

──では演じるという意味では、ミステリーでも法廷劇でも変わらない?

 法廷劇ということでしたら、日々実感しています。法廷のやりとりが演劇として扱われることの面白さですね。そこが一番大きいかな。それはお客様も客席に座られたら感じられると思います。演劇に対する概念があるとして「あれ? いつもの演劇と違う」とか「こういう体験が有り得るんだ」というところだと思います。もちろん何度も繰り返し上演されてきた作品ですから、ご覧になったことがある方もたくさんいらっしゃると思いますが、やはり今回初めて接する方も多いと思うので、そこには新鮮な感覚があると思います。

拡大成河=岩田えり 撮影

──それは成河さんご自身にとっても言えることですか?

 そうですね。演劇って、台詞は後ろを向いて言ったり、対話している相手に向いて言ったりするのではなくて、身体をひらいて客席に投げかけないといけない、というところがどの芝居でも多かれ少なかれ出てくるんですね。それは常にとても難しいことで。

 でもこの作品が面白いのは、法廷の場において、客席が陪審員席になっていて、台詞を完全に客席に投げていくんです。つまり、世田谷パブリックシアターをはじめとした、各地の劇場の客席に座る方々を全員共演者にしてしまえる。そうして欲しいと戯曲にも書かれている。そういう意味で、元々あった演劇の難しさがやりやすさに変わっている。それはお客様にとってもそうで、いきなり客席に投げかけられても「どうすればいいの?」というところってあると思うんです(笑)。

 でもそれがものすごくスッキリとやりとりができる。役者が客席を向いて話し続けることがこれほど自然な芝居はあまりないと思うので、是非それを目の当たりにしていただけたらなと思います。

◆公演情報◆
『検察側の証人』
東京:2021年8月28日(土)~9月12日(日) 世田谷パブリックシアター
兵庫:2021年9月16日(木)~9月20日(月・祝) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
大阪:2021年9月23日(木・祝)~9月28日(火)  枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:アガサ・クリスティ
翻訳・演出:小川絵梨子
[出演]
小瀧 望(ジャニーズWEST) 瀬奈じゅん/大滝 寛 浅野雅博 寺西拓人 斉藤直樹
林 愛夏 西川大貴 阿岐之将一/那須佐代子 梶原善/成河
 
〈成河プロフィル〉
 東京都出身。大学時代より演劇を始める。近年の主な舞台出演作品は、『森 フォレ』『スリル・ミー』『子午線の祀り』『イリュージョニスト』『Fully Committed』『VIOLET』『ねじまき鳥クロニクル』『タージマハルの衛兵』『人間風車』『髑髏城の七人Season花』『わたしは真悟』『エリザベート』『グランドホテル』など。2008(平成20)年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞受賞、第18回読売演劇大賞 優秀男優賞受賞。Netflix アニメーション・ミュージカル映画『VIVO ビーボ』で日本語版ビーボ役を担当。
公式ブログ
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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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