2021年08月16日
名古屋市の河村たかし市長が、品がいい人だとは思っていなかった。元プロ野球選手の張本勲さんが、「昭和」のままだとは承知していた。だが、ここまでとは。いやー、わかりやすくひどい。
河村市長は8月4日、表敬訪問に来たソフトボールの後藤希友選手から自分の首に金メダルをかけさせた後、いきなりかみつき、そのまま返した。
張本さんは8月8日の「サンデーモーニング」(TBS系)で、ボクシング女子フェザー級の金メダリスト入江聖奈選手に対し、「女性でも殴り合い、好きな人がいるんだね」「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね、こんな競技、好きな人がいるんだ」などと発言した。
2人をまとめるなら、「女性蔑視がデフォルトになっている人」だろう。河村市長72歳、張本さん81歳。長い年月をかけ、「女性=自分より下」を我がものとしている。だから蔑視的発想にも、それをあからさまにする瞬間にもアラームが鳴らない。後藤選手も入江選手も20歳。「女性」に「若い」が加われば、ますます「自分より下」になる。だから、何も考えずに行動する。金メダルかじりも、トンデモコメントも、彼らには「おはよう」とか「こんにちは」と同じだったと思う。
まあ、そんなことだろうとは思っていた。それが日本だろう、と。が、立て続けに醜悪な例を見せられると、がっくりくる。来年も日本のジェンダーギャップ指数はせいぜい119位だろうと、悲しくなる。とは言え、この、あまりにも不都合な真実をあぶり出してくれたのはオリンピック。オリンピックの効用だと思う。
そもそも河村&張本という強力ペアの前に、森喜朗元首相がいた。「多様性」を基本コンセプトに掲げた東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長が、「女性がたくさんいる理事会の会議は時間がかかる」などと発言をしたら、辞任に追い込まれるのも当然だ。ところが、わずか半年。河村&張本というペアが現れた。五輪でなかったら、メダルラッシュがなかったら、2人がこれほど目立つことはなかったと思う。
メダルラッシュはめでたい。が、現実にはデルタ株が猛威をふるっている。暗い。だから明るさにすがりたい。そういう構図があって、河村&張本の2人にもお鉢が回ってきた。そのことを意識したとは思わないが、そういう空気の中で「強めの行動」に出たのではないかと思う。結果として表れたのが、露骨な「女性は自分より下」行動。受けを狙ったとは思わない。無意識のうちにはしゃいだのではないかと想像する。
その結果、2人には世間からのブーイングが起きた。当然だが、これもオリンピックゆえだと思う。市長への表敬訪問などしばしばあることだろうし、張本さんのピント外れなコメントも「サンデーモーニング」では日常だ。が、
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください