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張本勲さんと河村たかし市長のコメントがそっくりで思う、五輪の“効用”

矢部万紀子 コラムニスト

 名古屋市の河村たかし市長が、品がいい人だとは思っていなかった。元プロ野球選手の張本勲さんが、「昭和」のままだとは承知していた。だが、ここまでとは。いやー、わかりやすくひどい。

 河村市長は8月4日、表敬訪問に来たソフトボールの後藤希友選手から自分の首に金メダルをかけさせた後、いきなりかみつき、そのまま返した。

河村たかし・名古屋市長(左)が、東京五輪ソフトボールの金メダルを突然かじった。手渡した後藤希友投手は一瞬驚いた顔をみせた=2021年8月4日午前10時1分、名古屋市役所河村たかし・名古屋市長は、ソフトボールの後藤希友投手の金メダルを突然かじった=2021年8月4日、名古屋市役所

 張本さんは8月8日の「サンデーモーニング」(TBS系)で、ボクシング女子フェザー級の金メダリスト入江聖奈選手に対し、「女性でも殴り合い、好きな人がいるんだね」「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね、こんな競技、好きな人がいるんだ」などと発言した。

 2人をまとめるなら、「女性蔑視がデフォルトになっている人」だろう。河村市長72歳、張本さん81歳。長い年月をかけ、「女性=自分より下」を我がものとしている。だから蔑視的発想にも、それをあからさまにする瞬間にもアラームが鳴らない。後藤選手も入江選手も20歳。「女性」に「若い」が加われば、ますます「自分より下」になる。だから、何も考えずに行動する。金メダルかじりも、トンデモコメントも、彼らには「おはよう」とか「こんにちは」と同じだったと思う。

 まあ、そんなことだろうとは思っていた。それが日本だろう、と。が、立て続けに醜悪な例を見せられると、がっくりくる。来年も日本のジェンダーギャップ指数はせいぜい119位だろうと、悲しくなる。とは言え、この、あまりにも不都合な真実をあぶり出してくれたのはオリンピック。オリンピックの効用だと思う。

無意識のうちにはしゃいだ?

 そもそも河村&張本という強力ペアの前に、森喜朗元首相がいた。「多様性」を基本コンセプトに掲げた東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長が、「女性がたくさんいる理事会の会議は時間がかかる」などと発言をしたら、辞任に追い込まれるのも当然だ。ところが、わずか半年。河村&張本というペアが現れた。五輪でなかったら、メダルラッシュがなかったら、2人がこれほど目立つことはなかったと思う。

 メダルラッシュはめでたい。が、現実にはデルタ株が猛威をふるっている。暗い。だから明るさにすがりたい。そういう構図があって、河村&張本の2人にもお鉢が回ってきた。そのことを意識したとは思わないが、そういう空気の中で「強めの行動」に出たのではないかと思う。結果として表れたのが、露骨な「女性は自分より下」行動。受けを狙ったとは思わない。無意識のうちにはしゃいだのではないかと想像する。

 その結果、2人には世間からのブーイングが起きた。当然だが、これもオリンピックゆえだと思う。市長への表敬訪問などしばしばあることだろうし、張本さんのピント外れなコメントも「サンデーモーニング」では日常だ。が、

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