メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

若村麻由美インタビュー(上)

「家族三部作」の一作、『Le Fils 息子』日本初演

大原薫 演劇ライター


 「現代においてもっとも心躍る劇作家」として世界中から注目されるフロリアン・ゼレール。家族をテーマに描いた『Le Fils(ル・フィス) 息子』が日本初上演される。

 本作を含む「家族三部作」として手掛けた『Le Père 父』が映画化され(邦題『ファーザー』)、アンソニー・ホプキンスがアカデミー賞主演男優賞、自身も脚本賞を受賞したゼレール。『Le Fils 息子』は彼のもっとも悲劇的で普遍的な作品と呼ばれる。思春期の絶望と不安に苛まれながら必死にもがく息子ニコラ(岡本圭人)と、愛によって息子を救おうとする父親ピエール(岡本健一)を描く、家族の物語だ。演出は『Le Père 父』『Le Fils 息子』の世界初演を手掛けたラディスラス・ショラー。数々の演劇賞を受賞した『Le Père 父』の2019年日本初演に次いで、本作を演出する。

 ピエールの元妻でニコラの母親であるアンヌを演じる若村麻由美。読売演劇大賞優秀女優賞受賞の『Le Père 父』に続くゼレール×ショラー作品への出演だ。演出のショラーが「『Le Père 父』で彼女を演出できたのは大きな喜びだった」と語るほど、若村に寄せる期待は大きい。若村にゼレール×ショラー作品の魅力や、岡本圭人・岡本健一という実の親子共演で母親役として出演することについて話を伺った。

親は子育てをしながら親として初めての経験をする

拡大若村麻由美=中村嘉昭 撮影〈ヘアメイク:長縄真弓/スタイリスト:岡 のぞみ(ブラウス(ottod'Ame/ストックマン)、パンツ(TANDEM/ストックマン)、イヤリング、リング(ABISTE)、シューズ(FREE LANCE/ストックマン)〉

――『Le Fils 息子』の脚本を拝読しましたが、先の展開が気になりながらどんどん読み進めていき、最後の結末に衝撃を受けました。

 そうですね、とても興味深く、いろいろなものが持って帰れる作品ですが、作品の展開がわかった上で2回、3回と観ると気付きも多く、より深く考えられる作品だと思います。『Le Père 父』のときも感じましたが、今回は特にそう思いますね。息子と向き合う父の立場としてはどうなんだろう、母の立場では……、家族とは?といろいろ考えてしまいます。

――若村さんが演じられるのは、ニコラの母親のアンヌ。「夫のピエールとは離婚手続き中で、ニコラと二人暮らしを始めるものの、動揺したニコラは不登校になり学校を退学になってしまう。生活環境を変えることが唯一自分を救う方法だと考えたニコラは、父親の新しい家族と一緒に暮らし始める……」というストーリーです。

 私が演じるアンヌはシングルマザーで弁護士として働きながら、多感な時期のニコラと数ヶ月間、二人暮らしをしていたけれどアンヌの手に負えなくなる。愛する息子が苦しみもがくのをなかなか救えず苦悩する父親と母親。子供が成長していくうえで新しい体験や新しい環境に慣れることは大変ですが、親自身も子育てをすることで親として初めての体験をしていくんだと改めて感じました。

拡大若村麻由美=中村嘉昭 撮影

――この作品に出てくる家族の事情はありますが、『Le Fils 息子』というタイトルのとおり、非常に普遍的に感じられる作品だなと思います。自分自身や自分の家族に重ねて考えることができるかもしれません。

 『Le Père 父』で私が演じた娘もアンヌという同じ名前だったのですが、前回の父親に対する娘の思い、今回の息子に対する母の思いを両方体験して、愛する思いがあっても、心を通わせ理解し合うことがどんなに繊細で複雑なことか、胸がしめつけられました。ゼレールの愛と哀しみの美しい世界観や家族に対する思いはこの2作品に共通するものがあります。ゼレールの「家族三部作」のうちの2作品に出演させていただけたのが貴重でした。今回の『Le Fils 息子』に関しては、アンヌとピエールが既に別居していて、ピエールが新しい家族を持っているという設定が、親子だけでなく夫婦関係の構築の危うさも感じさせ、とても効果的だなと思います。

◆公演情報◆
舞台『Le Fils(ル・フィス) 息子』
2021年8月30日(月)~9月12日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
ほか、北九州・高知・能登・新潟・宮崎・松本・兵庫 にて上演
公式サイト
[スタッフ]
作:フロリアン・ゼレール
翻訳:齋藤敦子
演出:ラディスラス・ショラー
[出演]
岡本圭人、若村麻由美、伊勢佳世、浜田信也、木山廉彬、岡本健一
 
〈若村麻由美プロフィル〉
 NHK連続テレビ小説「はっさい先生」のヒロインに選ばれデビュー。ドラマ・映画・舞台で古典から現代劇まで幅広い役柄で活躍している。第25回読売演劇大賞優秀女優賞(『ザ・空気』/『子午線の祀り』)、第44回菊田一夫演劇賞(『チルドレン』)、第27回読売演劇大賞優秀女優賞(『Le Père 父』)ほか多数の受賞歴がある。本年の舞台『子午線の祀り』(1-3月)『首切り王子と愚かな女』(6-7月)、映画『科捜研の女-劇場版-』(9/3)『老後の資金がありません』(10/30)公開予定。
公式ホームページ

・・・ログインして読む
(残り:約1280文字/本文:約3376文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

大原薫の記事

もっと見る