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若村麻由美インタビュー(下)

「家族三部作」の一作、『Le Fils 息子』日本初演

大原薫 演劇ライター


若村麻由美インタビュー(上)

勇気ある岡本圭人・岡本健一親子に負けないエネルギーを

――アンヌの息子ニコラ役を岡本圭人さん、アンヌの元夫でニコラの父親ピエール役を岡本健一さん。実際の親子が親子の役を演じます。

 作品の内容が内容なだけに、実の親子が演じるのは勇気があるなと驚きました。緊張感のある父親を演じるには自分の中からいろいろな部分を引き出さないといけないし、思いを戦わせなければいけないですから。私も勇気と覚悟のある岡本親子に負けないくらいのエネルギーを出さなければいけないと思っています。

拡大若村麻由美=中村嘉昭 撮影〈ヘアメイク:長縄真弓/スタイリスト:岡 のぞみ(ブラウス(ottod'Ame/ストックマン)、パンツ(TANDEM/ストックマン)、イヤリング、リング(ABISTE)、シューズ(FREE LANCE/ストックマン)〉

――一緒に稽古をされていかがでしょうか。

 最初の本読み稽古のときに圭人さんの声を聴いて「ああ、これはニコラの声だな」と納得させられました。ニコラのセンシティブな感じや、多感な時期のまっすぐさやピュアさ、ナイーブさを圭人さんは既に持っていらっしゃる。ご一緒するのが楽しみになりました。

 健一さんは舞台経験が豊富で信頼しています。どんなことがあってもきっと(演技の)キャッチボールをしてくださると思う。健一さんが演じるピエールは、実際の健一さんのご年齢よりもちょっと上の世代の父親像に近いと演出家から説明がありました。昭和平成令和にかけて父親像は変わってきたと感じますが、フランスも同じなのですね。

――父親像はどう変わっているのでしょうか。

 昭和くらいまでは家族では父親が力を握っていて、家族を養い導けるのが理想の父親だったのではないでしょうか。だんだん女性の社会進出もあり、夫婦が対等になり、少子化で子供が家族で重要な位置を占めるようになって、子供と友達みたいな父親が理想の父親と思われるようになってきたのだと。今回の稽古の中でも、父親像の変遷を感じますね。

拡大若村麻由美=中村嘉昭 撮影

――この作品の中に現代の家族の縮図があるのですね。

 息子のことで元夫に助けを求めないではいられないところまで追い詰められた母親アンヌの状況から始まり、家族を養う強い父親であると思っていたピエールが、どうしたら息子を救えるのかと思い行動を起こしながらも、自分の手に負えなくなっていく。この物語の中では様々な選択を迫られます。医学的な選択をする時、「愛情では足りない。これからは愛情では不十分なんです」という医師の台詞が刺さりました。『Le Père 父』の認知症の問題もそうでしたが、選択する難しさや人生における困難、家族で解決できない問題がこの物語に詰まっているんです。

――なるほど。

 ラッドに聞いたのですが、ピエールという名前には「石」という意味があるのだそうです。日本で言う「頑固親父」というほどではないにしても、石を意味する名前をゼレールさんがつけていると想像するだけで、イメージが湧いてきますよね。『Le Père 父』の父親役の名前もピエールでしたから。

◆公演情報◆
舞台『Le Fils(ル・フィス) 息子』
2021年8月30日(月)~9月12日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
ほか、北九州・高知・能登・新潟・宮崎・松本・兵庫 にて上演
公式サイト
[スタッフ]
作:フロリアン・ゼレール
翻訳:齋藤敦子
演出:ラディスラス・ショラー
[出演]
岡本圭人、若村麻由美、伊勢佳世、浜田信也、木山廉彬、岡本健一
 
〈若村麻由美プロフィル〉
 NHK連続テレビ小説「はっさい先生」のヒロインに選ばれデビュー。ドラマ・映画・舞台で古典から現代劇まで幅広い役柄で活躍している。第25回読売演劇大賞優秀女優賞(『ザ・空気』/『子午線の祀り』)、第44回菊田一夫演劇賞(『チルドレン』)、第27回読売演劇大賞優秀女優賞(『Le Père 父』)ほか多数の受賞歴がある。本年の舞台『子午線の祀り』(1-3月)『首切り王子と愚かな女』(6-7月)、映画『科捜研の女-劇場版-』(9/3)『老後の資金がありません』(10/30)公開予定。
公式ホームページ

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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