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カンヌ国際映画祭リポート(下)──環境対策、ネットフリックスとの関係

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

 前回は2年ぶりに通常開催された第74回カンヌ国際映画祭(2021年7月6日から17日まで)の総括を書いた。今回は二つのテーマ、「環境対策」と「ネットフリックスとの関係」に絞って解説したい。

ドラスティックな環境対策

 カンヌは華やかさが売りの映画祭である。ハリウッドスターならプライベートジェットで来る人もいるし、レッドカーペットは美観のため頻繁に敷き直される。そして夜は飲んで食べての豪華な宴。環境面から見れば決して地球に優しいイベントではない。

 ところが2021年、数々の思い切った環境対策を施し、エコ路線へ大きく舵を切った。

2021年のカンヌ映画祭は様々な面で変化を迫られた©FDC拡大2021年のカンヌ国際映画祭は様々な面で変化を迫られた ©FDC

環境保護プロジェクトに寄付

 今年からアクレディテーション(映画祭参加証)を申請する全員が支払うことになったのが「環境への貢献」料。料金は税込み24ユーロ(約3100円)。カンヌには毎年世界から監督やスター、ジャーナリスト、映画業界の関係者が一堂に会する。その際の移動には多大なCO2が排出される。カンヌとしては映画祭開催で算出されるカーボンフットプリント(対象活動のCO2排出量を換算して「見える化」したもの)を、できる限り埋め合わせたいと考えたのだ。

 カーボンフットプリントに関しては、2016年にちょっとした騒動も起きている。環境保護活動に熱心なレオナルド・ディカプリオがカンヌ滞在中、環境への貢献に対してアメリカで表彰された際、プライベートジェットでニューヨーク・カンヌ間を往復したことが報じられ、非難されたのだ。カンヌは今後このような事例に一層敏感になることだろう。

 環境への貢献料は環境税のように集められた後、環境専門家4人が選ぶ6つの環境保全プロジェクトに使われる。ブラジルやホンジュラスの森林保全や生態系の保護、フランス中南部カンタル地方の植林活動、カンヌ近郊グラースの火災後の森林再生などだ。大規模な山火事が頻発する昨今、意義深い行為に違いない。

 集められたお金は映画祭参加者と映画祭からの拠出分を合わせ総計約50万ユーロ(約6400万円)にのぼるとされる。映画祭と利害関係のない外部の専門家が拠出先を判断するのも信頼感がある。


筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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