2021年08月24日
カンヌ国際映画祭リポート(上)──コロナ禍で2年ぶりに“再会”
前回は2年ぶりに通常開催された第74回カンヌ国際映画祭(2021年7月6日から17日まで)の総括を書いた。今回は二つのテーマ、「環境対策」と「ネットフリックスとの関係」に絞って解説したい。
カンヌは華やかさが売りの映画祭である。ハリウッドスターならプライベートジェットで来る人もいるし、レッドカーペットは美観のため頻繁に敷き直される。そして夜は飲んで食べての豪華な宴。環境面から見れば決して地球に優しいイベントではない。
ところが2021年、数々の思い切った環境対策を施し、エコ路線へ大きく舵を切った。
今年からアクレディテーション(映画祭参加証)を申請する全員が支払うことになったのが「環境への貢献」料。料金は税込み24ユーロ(約3100円)。カンヌには毎年世界から監督やスター、ジャーナリスト、映画業界の関係者が一堂に会する。その際の移動には多大なCO2が排出される。カンヌとしては映画祭開催で算出されるカーボンフットプリント(対象活動のCO2排出量を換算して「見える化」したもの)を、できる限り埋め合わせたいと考えたのだ。
カーボンフットプリントに関しては、2016年にちょっとした騒動も起きている。環境保護活動に熱心なレオナルド・ディカプリオがカンヌ滞在中、環境への貢献に対してアメリカで表彰された際、プライベートジェットでニューヨーク・カンヌ間を往復したことが報じられ、非難されたのだ。カンヌは今後このような事例に一層敏感になることだろう。
環境への貢献料は環境税のように集められた後、環境専門家4人が選ぶ6つの環境保全プロジェクトに使われる。ブラジルやホンジュラスの森林保全や生態系の保護、フランス中南部カンタル地方の植林活動、カンヌ近郊グラースの火災後の森林再生などだ。大規模な山火事が頻発する昨今、意義深い行為に違いない。
集められたお金は映画祭参加者と映画祭からの拠出分を合わせ総計約50万ユーロ(約6400万円)にのぼるとされる。映画祭と利害関係のない外部の専門家が拠出先を判断するのも信頼感がある。
2019年までジャーナリストは、分厚いカタログなど膨大な紙資料を受け取っていた。ミニロッカーも割り当てられ、毎日無数のプレス資料が詰め込まれていた。ロッカーの隣には巨大ゴミ箱があり、ジャーナリストが資料の大半を即ゴミ箱に捨てるというシュールな光景もよく見られた。
それが今年からロッカーも紙資料配布用のカウンターも消滅。代わりにベンチや分別用ゴミ箱が登場した。毎日の上映スケジュールは紙でも発行されるが、その他の紙資料はほぼデジタルに移行。特に紙資料に慣れた年配ジャーナリストに変化は酷かと思ったが、特に不満の声はない。やる気になれば人間すぐに慣れるようだ。
カンヌの華といえばレッドカーペット。以前はガラ上映(正装の関係者が出席する公式上映)のたびに敷き直されたが、今年から一日1回のみ。全体の使用量も半減。使用されたカーペットは、
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください