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笹本玲奈が遊女・梅川で見せる新境地(上)

秋元松代の名戯曲『近松心中物語』を長塚圭史の新演出で上演

大原薫 演劇ライター


 KAAT神奈川芸術劇場で上演される『近松心中物語』に笹本玲奈が梅川役で出演する。

 新芸術監督長塚圭史が、メインシーズンの幕開けに選んだのは戦後を代表する劇作家・秋元松代による『近松心中物語』。

 飛脚宿亀屋養子・忠兵衛と見世女郎・梅川、古物商傘屋若旦那・与兵衛と箱入り娘・お亀。境遇の違う二組の一途な恋を扱った本作は故・蜷川幸雄による豪華絢爛な演出で千回を超える上演を重ねてきた。今回の上演では、華やかな新町を取り巻く境遇の違いを現代の格差社会に通じる物語として描く。近松門左衛門作品の魅力をふんだんに盛り込んだ秋元松代の味わい深い台詞が現代の私たちに響く、新たな『近松心中物語』を目指すという。

 笹本玲奈は『マリー・アントワネット』のマリー・アントワネット役や『ウエスト・サイド・ストーリー』のマリア役など数々のミュージカルで大役を務める。遊女・梅川はこれまで太地喜和子、寺島しのぶ、宮沢りえなど日本が誇る名女優が演じた役。笹本が梅川役に挑戦する思いを聞いた。

最初は「何かの間違いじゃないかな」(笑)と思いました

拡大笹本玲奈=中村嘉昭 撮影

――笹本さんが『近松心中物語』梅川役で出演しようと思った決め手は何だったでしょうか?

 あまりにも有名な作品で、お話しいただいたときは「何か間違いじゃないかな」(笑)と思ったんです。私はミュージカルに出演することが多いですし、和物のイメージをあまり持たれていないと思うので。でも、日本人に生まれたからには着物を着てお芝居をしてみたいとずっと思っていたので、ぜひ梅川に挑戦させていただきたいと出演を決めました。

――『近松心中物語』はご覧になったことはありましたか?

 出演のお話をいただいてから、秋元さんの脚本を読み、蜷川幸雄さんが演出した舞台の映像を観ました。映像を観て、その豪華絢爛さに驚きました。最後の大量に雪が降るシーンが美しく、出演者も素晴らしすぎて、「本当に私はこれを演じるの?」と思ってしまったくらい。ただ、蜷川版だけでなく、いのうえひでのりさん演出で宮沢りえさんが梅川を演じたバージョンなどもあって、時代によって演出が変わる戯曲なのだろうなとも思いました。だから、今回の長塚さん演出がますます楽しみになりましたね。

拡大笹本玲奈=中村嘉昭 撮影

――秋元さんの脚本を読んだ印象は?

 秋元さんがお書きになる台詞の美しさや人間関係の切なさが伝わってきて感動しましたが、梅川・忠兵衛の二人に共感はできなかったんです。最初に読んだ印象では、お亀・与兵衛のほうが現代のカップルに近い感覚があって。最後、死ぬに死ねなくて「もうちょっと生き延びさせてくれ」という与兵衛の気持ちはわかるなと思いましたし、お亀は梅川とは対照的な強い女性で、与兵衛を引っ張っていくように見えたので、お亀・与兵衛の印象が残りました。お亀・与兵衛はとても現実的で、梅川・忠兵衛は美しい絵が浮かんできました。梅川・忠兵衛はとても人間味があふれた二人ではありますが、(二人で死に向かっていくというのは)私が持っている感性とは違うなというのが正直なところです。

――確かに今まで笹本さんが演じてきた役のイメージから考えると、梅川を演じられるのは意外かもしれません。

 そうですね、ミュージカルのヒロインは芯が強くて「頑張って一人で生きていこう」というような女性が多いんです。強い女性というか。梅川のように男性を慕って「あなたが選ぶ選択に私も従います」という姿が、昔の日本の美しい恋愛の描かれ方なのかなと思いましたね。

◆公演情報◆
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『近松心中物語』
神奈川:2021年9月4日(土)~9月20日(月・祝) KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
北九州:2021年9月25日(土)~9月 26日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
豊橋:2021年10月1日(金)~10月3日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
兵庫:2021年10月8日(金)~10月10日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
枚方:2021年10月13日(水) 枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール
松本:2021年10月16日(土) まつもと市民芸術館 主ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:秋元松代
演出:長塚圭史
音楽:スチャダラパー
[出演]
田中哲司/松田龍平、笹本玲奈/石橋静河
綾田俊樹、石橋亜希子、山口雅義、清水葉月、章平、青山美郷、
辻本耕志、益山寛司、延増静美、松田洋治、蔵下穂波
藤戸野絵、福長里恩/藤野蒼生(子役 Wキャスト)
朝海ひかる、石倉三郎
 
〈笹本玲奈プロフィル〉
 1998年ミュージカル『ピーターパン』で5代目ピーターパンとして舞台デビュー。その後『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』など数々のミュージカル作品に出演。第32回菊田一夫演劇賞受賞、第15回読売演劇大賞優秀女優賞、杉村春子賞受賞。主な出演作品は、『マリー・アントワネット』、『ハウ・トゥ・サクシード』『星の大地に降る涙THE MUSICAL』、『ウエスト・サイド・ストーリーSeason1』『ジキル&ハイド』『ミス・サイゴン』など。2022年3月から『メリー・ポピンズ』への出演が決まっている。
オフィシャルホームページ
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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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