大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター
演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
秋元松代の名戯曲『近松心中物語』を長塚圭史の新演出で上演
――笹本さんが梅川を演じるにあたって、どんなところを表現されたいでしょうか。
同じ女性から見ても、梅川はとても可愛らしいですよね。言葉の選び方や男性を慕う姿というのが、私にはないところで(笑)愛らしいなと思います。忠兵衛は梅川に対して一目ぼれをしましたが、「この状況から救い出してあげたい」という気持ちもあったのではないでしょうか。梅川が苦労している姿や、未来がない真っ暗な中で生きている寂しさが、きっと見て取れたのだと思います。それで、梅川を守ってあげたい、救い出してあげたいという気持ちが生まれたのかもしれません。昔の日本の女性は男性より二歩も三歩も引いているのが美しいとされていたところがあったと思います。梅川は昔の人が思う、理想の女性像なのでしょうね。そういう感覚は作品の世界に入れば自然と身に着いてくるものかなと思いますし、忠兵衛役の田中(哲司)さんと一緒に芝居をする中で、自分が知らなかった自分に出会える気がします。
――近松門左衛門の『冥土の飛脚』では梅川・忠兵衛の出会いのシーンは描かれていないのですが、作者の秋元さんが本作で付け足して書いたのはどうしてだと思いますか。
どうでしょうね……、恋愛色を強くしたかったのかもしれません。梅川と忠兵衛にはお互い、通じるものがあったと思うんですよね。忠兵衛も亀屋に養子で来て、実の両親と離れて生活する寂しさがあって、梅川とは言葉を交わさなくても何か通じるものがあったのかなと思います。
――笹本さんご自身は、梅川と忠兵衛のように一目ぼれするという感覚はわかりますか?
わからないです(笑)。ただ、梅川に関してはこれまで遊女として出会ってきた男性と忠兵衛が全然違ったのかなと思います。今まで自分を人間として見てくれない人がほとんどだった中で、見るからに誠実で真面目そうな忠兵衛が強く印象に残ったんじゃないかな。別れた後も、忠兵衛の姿が脳裏に焼き付いて離れないという出会いだったように感じます。
◆公演情報◆
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『近松心中物語』
神奈川:2021年9月4日(土)~9月20日(月・祝) KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
北九州:2021年9月25日(土)~9月 26日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
豊橋:2021年10月1日(金)~10月3日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
兵庫:2021年10月8日(金)~10月10日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
枚方:2021年10月13日(水) 枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール
松本:2021年10月16日(土) まつもと市民芸術館 主ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:秋元松代
演出:長塚圭史
音楽:スチャダラパー
[出演]
田中哲司/松田龍平、笹本玲奈/石橋静河
綾田俊樹、石橋亜希子、山口雅義、清水葉月、章平、青山美郷、
辻本耕志、益山寛司、延増静美、松田洋治、蔵下穂波
藤戸野絵、福長里恩/藤野蒼生(子役 Wキャスト)
朝海ひかる、石倉三郎
〈笹本玲奈プロフィル〉
1998年ミュージカル『ピーターパン』で5代目ピーターパンとして舞台デビュー。その後『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』など数々のミュージカル作品に出演。第32回菊田一夫演劇賞受賞、第15回読売演劇大賞優秀女優賞、杉村春子賞受賞。主な出演作品は、『マリー・アントワネット』、『ハウ・トゥ・サクシード』『星の大地に降る涙THE MUSICAL』、『ウエスト・サイド・ストーリーSeason1』『ジキル&ハイド』『ミス・サイゴン』など。2022年3月から『メリー・ポピンズ』への出演が決まっている。
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