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宮藤官九郎 取材会レポート、『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』大阪公演が開幕

今だからこそ明るく前向きになれるようなお芝居を

真名子陽子 ライター、エディター


 大パルコ人④マジロックオペラ『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』の大阪公演が開幕する(12日まで、COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール)。パワフルでスリリングな舞台作品を世に送り出す“大パルコ人”は、大人計画とパルコが共同プロデュースする宮藤官九郎作・演出のオリジナルロックオペラのシリーズ。

 これまで、2044年の渋谷、2022年の渋谷、2033年の池袋を舞台に暴れまくった“大パルコ人”シリーズ。その 第4弾となる今回は、11年前の戦争(『R2C2』)で一度崩壊した2055年の渋谷を舞台に、特殊な能力と共通の悩みを持つ浮浪児たちが出会い、双子のDJポリス、浮浪児を利用してのし上ろうと目論むカリスマ・育メン・ポップシンガーらと関わりながら成長していく。やがて「世界を救う」という壮大なテーマを背負い、能力と羞恥心の狭間で葛藤する若者たち。怒髪天・上原子友康のオリジナル楽曲にのせて、今回も桁違いのバカバカしさと感動が炸裂する。

 出演は、NHK朝ドラ『あまちゃん』以来の宮藤とのタッグとなるのん、そして様々なクリエーターに愛され幅広く大活躍中の村上虹郎、映画『TOKYO TRIBE』の主題歌、出演で鮮烈な印象を残したYOUNG DAIS、バラエティはもちろん、ドラマ、舞台などでも常にフルスロットルの藤井隆をはじめ、“大パルコ人”シリーズには欠かせないレギュラーメンバーの三宅弘城、少路勇介、よーかいくん、初参加となるのは、荒川良々に伊勢志摩、そして宮藤官九郎はギター演奏でも舞台を盛り上げる。

 大阪で開かれた取材会で、作・演出・出演の宮藤官九郎が作品について語ってくれた。

2055年、戦争が終わって復興していくというストーリー

宮藤官九郎=岸隆子 撮影拡大宮藤官九郎=岸隆子 撮影

記者:今回はどんな内容の作品になるんでしょうか?

宮藤:「大パルコ人」というシリーズで、ロックオペラと言っていますが俳優が実際に生で楽器を演奏したり歌ったりしながら、ストーリーが進んでいくミュージカルシリーズの第4弾になります。このシリーズでは、これまで未来を設定した物語を3本上演しているのですが、最初が2044年、そして2022年、2033年の設定でしたので、11年おきということで今回は2055年の設定です。2044年を舞台にした最初の作品、『R 2 C 2~サイボーグなのでバンド辞めます!~』では、戦争が始まったというところで芝居が終わるのですが、今回、その戦争が終わって、そこから復興していくというストーリーになっています。メインとなるのんちゃんと村上虹郎くんが超能力を持っている役です。

記者:そののんさんと村上虹郎さんはじめ、個性豊かな人が集まりました。印象を教えてください。

宮藤:のんちゃんは『あまちゃん』以来なんですけど、芝居を観に行かせてもらったり、観に来てくれたりしていて、いつか一緒にやれたらいいなと思っていましたので、今回その念願が叶いました。虹郎くんは舞台にたくさん出られているのですが、すごく独特な雰囲気を持っていて、ナイーブな若者役を演じているのを観てすごくいいなと。そして、藤井隆さんには今回、エンタメ部分をほぼ担っていただこうと思っています。ちなみに、僕の役は85歳の元パンクという役なんですが、2055年まで生きていたら85歳なんです、僕。そこはすごくリアルな設定にしていて、パラレルワールドじゃないけれども、未来はこうなっていたらおもしろいなというのを一貫して創ってきました。

記者:のんさんの役者としての魅力は?

宮藤:「あまちゃん」という自分のキャリアの中で重要なドラマを一緒にやりましたので、気軽に誘えないというか、彼女とはちゃんと向き合ってやりたいなと思っていました。魅力は、彼女ににしかできない表現があるといつも思っています。誰かと比べるということともまた違って、彼女にしかできないことがあって、すごく特別な女優さんだと思います。だからやるんだったらちゃんと取り組みたいなと思って、今回お誘いしました。割と軽く引き受けてくれましたね、いいですよ~と。私は結構重い気持ちでオファーしたんですけれどもね……(笑)

未来を見ようとすると屁が出る、テレパシーを使うと不細工になる

宮藤官九郎=岸隆子 撮影拡大宮藤官九郎=岸隆子 撮影

記者:超能力を持っているということですが、どのように超能力が関わってくるんですか?

宮藤:虹郎くんがエスパーの役なんですけれども、未来を見ようとすると屁が出るんです。みんなに未来がこうなるよと言いたいんだけど、屁が出てしまうので、恥ずかしくてその能力を封印しているという役。のんちゃんの役はテレパシーを使って人に気持ちを伝えられるんだけど、そうしようとすると顔がすごく不細工になる。お互いに能力はあるんだけれどもそれを上回る弊害があって、その能力を封印しているという二人です。他にも超能力者がいるのですが、主にこの二人が世の悪と戦うためにそのハンディキャップを克服しながら、能力を使って世界を救うという話になります。

記者:公演名にもカッコ書きされていますが、「屁が出ます」にこだわっているんですか?

宮藤:いや……(笑)、こだわってはいないんですけど、何か恥ずかしいことが起こると良いなと思ったんです。このお芝居のあらすじを考えた時は、世の中がこんな風になるとは思っていなかったので、深く考えていなかったのですが、ここ1年ぐらいでいろんな価値観が変わりましたし、正直に言うと楽しいお芝居をやりたいなと。今だからこそ明るく前向きになれるようなお芝居をやれたらいいなと思って創りました。

虹郎くんがのんちゃんのことを好きで、好きな女の子の前で屁が出ちゃうからどうしようという話なのですが、その未来を予言する時に屁が出るということに目をつけた藤井隆さんが、彼の屁の音をボーカロイド的に加工して、屁が歌ってるみたいな感じになるという、思いっきり「屁」が大事な話なんです(笑)。

記者:この時世を思って、より明るく前向きな作品にしようと?

宮藤:そうですね。人前で演じるという、当たり前のようにやっていたことが急にできなくなってしまって、どうしたもんかなと思っていたんだけれども、それでも昨年の秋にパルコ劇場で全公演休むことなく上演できたんですね、地方公演も含めて。配信などもしましたが、やっぱり生でやる意義が強くなったことをその時に実感したんです。本番を舞台上でやるということが当たり前じゃなくなった時に、もちろん今まで真面目にやってきたつもりだけど、なんとなく甘えていたというか、慣れてしまっていたんじゃないかなと。そういう意味でも、今、何ができるんだろうと考えて、楽しい気持ちになれるエンターテインメントをやるということに立ち返ろうと思いました。

本当に悪いのは人じゃなくて世の中の不寛容なムード

宮藤官九郎=岸隆子 撮影拡大宮藤官九郎=岸隆子 撮影

記者:明確な悪という存在はいるんでしょうか?

宮藤:藤井さんの役になるんですけど、明確に言うとそんなに悪くない人です(笑)。今、うまく言えないんだけれど、いろんなことに対して不寛容というか、見張られているような緊張感がなんとなくあって、そういうムードに対して別にいいじゃないと立ち向かう、そういうことがテーマになっています。戦争があって東京の人口が1/100に減ったという設定で、そこでマイノリティの人たちが生き残って、その中でも虐げられている末端の人たちが立ち上がるという。その彼らを利用しようとする藤井さん演じるスターのポップシンガーが、みんなに味方だよと言いながらうまく取り入って利用する悪い奴なんですけど、でも、本当に悪いのはこの人じゃなくて世の中の不寛容なムードなんだよという。僕が説明すると下手なんですけど、お芝居になるとよく分かってもらえると思います。

記者:この『大パルコ人』シリーズは、宮藤さんのお仕事の中でどんな位置付けになっていますか?

宮藤:最初は続けるつもりはなかったんです。ミュージカルを本格的にやろうと思ったら、ミュージシャンやダンサーをそろえなきゃいけないけれど、それとは違う形でできないかなと。原始的というか出ている役者が全部やろうと思ったんです。楽器を弾くのも僕たち演者なので公然とバンド活動ができるという場、音楽活動と演劇活動が一緒にできる場ですね。でも、脚本を作る作業が普通の舞台やコントの時より2.5倍ぐらい労力がかかるんです。ストーリーを考えながら同時に歌詞も考えたり、曲を考えたり、この役者さんにはこれをやって欲しいとか……やったことがない人に楽器を覚えてもらったり。創っていく過程がすごく大変なんですけど、舞台に出るとすごく楽しいです。毎回これで最後にしようと思いながら、今回もこれで最後にしようと思っているんですけどね……。

同じ時間、同じ空間を共有することは特別なこと

宮藤官九郎=岸隆子 撮影拡大宮藤官九郎=岸隆子 撮影

記者:このご時世だからこそできる演出を?

宮藤:万全の態勢で公演をやりますので、安心して楽しんでいただきたいなと思います。このシリーズでは、客席で芝居したり、客いじりをしたり、お客さまを舞台に上げたり、男同士でキスしたり(笑)。それが全くできないんですよね、当たり前ですけど。じゃあ、その中で何ができるのかをものすごく知恵を絞りました。お客様に参加してもらう代わりに何ができるかなと。これは皆さん考えたと思います。配信とか無観客とかいろんな方法を試したけれど、同じ時間、同じ空間を共有するということがやっぱりいいことなんだなって。それが特別なことなんだということを、確認するための時間だったのかなとも思います。今回もネタバレになるから言えないですけれども、来てくださったお客さまに楽しんでもらえることを考えています。

記者:最後にメッセージをお願いします。

宮藤:今までみたいに来てくださいとなかなか言えないですし、来てもらうことが大変だと思います。とても言いづらいところはあるんですけど、だからこそこの公演に関しては、とにかくいつも以上に、いつもの2倍3倍楽しい公演にしたいと思っていますので、思いっきり笑いたい人はぜひ観に来ていただきたいです、よろしくお願いいたします。

◆公演情報◆
大パルコ人④マジロックオペラ
『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』
大阪:2021年9月4日(土)~9月12日(日)  COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
仙台:2021年9月15日(水)~9月17日(金)  電力ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:宮藤官九郎
音楽:上原子友康(怒髪天)
[出演]
のん、村上虹郎、三宅弘城、荒川良々、伊勢志摩、少路勇介、よーかいくん、YOUNG DAIS、宮藤官九郎、藤井隆

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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