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密フェス「波物語」で騒いだ人は性感染症を気にしない男性と似たり寄ったり

自分を粗末にする人に「他人のことを考えろ」と言っても届かない

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 愛知県常滑市の「AICHI SKY EXPO」で2021年8月29日に開催されたHIPHOP系野外音楽フェス「NAMIMONOGATARI(波物語)2021」が、感染対策を無視していたことから波紋を広げています。

 主催者側は感染対策を形式上呼びかけていたものの、上限を超えた8000人を動員し、酒類を販売したうえ、ソーシャル・ディスタンスも不徹底でした。来場者も、マスクを着用しない者がいたり、お互いの体をぶつける「モッシュ」を起こしたり、曲に合わせて大声で歌う者もいたようです。

 出演した一部の著名アーティストは「当初の約束とは違った」と謝罪しているものの、観客に声を上げるよう煽る出演者もいました。さらには、イベント終了後には飲食物のゴミが散乱し、感染拡大防止の観点からやってはいけないことのオンパレードという状態でした。

 これに対して、「ルールを守って頑張っているエンタメ業界の人々の努力や医療従事者の方々の苦労を水の泡にする行為だ」「社会全体の迷惑になることがわからない連中なのだろう」等、インターネット上で批判の声が多数上がり、著名人も多数批判しています。多くの人が怒るのも当然であり、主催者・来場者・出演者を擁護することは一切できません。

「密」なうえに酒が提供されていたフェス「NAMIMONOGATARI2021」=愛知県常滑市、読者提供ヒップホップの野外フェス「NAMIMONOGATARI2021」=愛知県常滑市、読者提供

ルールよりも他人に迷惑をかけないことよりも大事なこと

 ただし、その一方で、「ルールは守らなくちゃダメだ」「迷惑をかけちゃダメだ」という類の批判を見ていると、そのような「社会規範」で人々の逸脱行動を抑えようとしてきた日本社会の限界が露呈した面もあるのではないかと感じます。

 たとえば、仮に私がHIPHOP系の音楽フェスにかつて頻繁に参加していたとしても、コロナ禍では絶対に行きません。仮に行ったとしても、あのようなリスクの高い行動を取ることはありません。

 でも、その理由は、「ルールは守らなければならないから」でもなければ、「人に迷惑がかかるから」でもありません。「自分が無症状感染者だったら、人に感染させるかもしれない」という理由ももちろんありますが、それ以前に「自分の健康が大事だから」です。

 明らかに今までとはレベルの違う第5波では、すぐ近くに新型コロナウイルスの脅威が迫っています。ですから「自分の“大切な心身”を守り抜きたい」という強い意志があれば、あのような行動は絶対取らないはずです。つまり、彼らはルールや社会規範を守る以前に、自分の心身を守るという意思が欠如している人たちだと思うのです。

コンドームを着けたがらない男性と似ている

 これと似たような事例としては、「特定のセックスパートナー以外の、性行為に関する信頼関係がまだ構築できていない相手と性行為をする際に、コンドームを使用しようとしない男性」があげられるのではないでしょうか。そのような性行為は、性感染症に罹患するリスクが相対的に高く、相手はもちろん、男性側にとっても本来は避けたい行為です。

 低用量ピルやIUS(子宮内避妊システム)等の利用率が先進諸国と比べて極端に低い日本では、異性愛者の男性がコンドームを利用しないことは、相手の女性に対して予期せぬ妊娠のリスクを高めます。また、自分が性感染症にかかっていた場合は、相手にうつす可能性もあります。それと同時に、相手からうつされるリスクを考えれば、着用するという選択肢が合理的なのです。

 ところが、「自分の“大切な心身”を守り抜きたい」という強い意志に欠けている、つまり自分の心身は大切だと思える自己肯定感が育まれていないと、そのようなリスクに対して鈍感になり、目の前の刹那的な快楽を求めがちになります。

 今回のフェスでも、「コロナにかかってもいいくらいの最高のライブだった」とSNSに書いていた参加者がいました。これは、あからさまに自分の心身の健康を軽視する発言であり、上記の事例同様、目の前の刹那的な快楽に溺れているパターンでしょう。

hurricanehankshutterstock(写真はイメージ) hurricanehank/Shutterstock.com

自分を大切にできない人間に他人は大切にできない

 このような事態を防ぐためには、「コンドームをつけるというマナーを守りましょう」「相手のことを考えましょう」というメッセージも確かに重要ですが、それ以前にコンドームは

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