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ノゾエ征爾が『物理学者たち』を演出(下)

スイスを代表する劇作家デュレンマットの代表作

大原薫 演劇ライター


ノゾエ征爾が『物理学者たち』を演出(上)

この作品の大きなテーマは「考え続けよう」ということ

――翻訳された山本佳樹さんが「『物理学者たち』が書かれた時代の脅威が核戦争だったとすれば、2021年のそれはずばりパンデミックでしょう。デュレンマット生誕100年となる本年、パンデミックのなかを生きる私たちの前に『物理学者たち』が予言劇のようによみがえり、その比喩の力で私たちの心を揺さぶってくれるものと期待しています」と書かれています。ノゾエさんは今この作品を上演する意味をどのように捉えているのでしょうか。

 大きなテーマとして僕が感じているのは、具体的に「核」とかではなくて、「考え続けましょう」ということ。「思考を止めるな」ということだと思うんです。「これでいいんですか、どうなんですか」「何を正しいと思いますか」と考え続けるべきだというのが、本当の大きなテーマだと思っています。今、コロナ禍において誰かを攻撃するというのでなく、それぞれが考え続けるのが大切だということ。それが本当に今上演する意義に繋がるなと思っています。

ノゾエ征爾拡大ノゾエ征爾

――そうですね。でも、何が正しいか考え続けることは難しい……。現実の過酷さに負けそうな今でもあります。

 現実の過酷さ、負けそうですよ……(笑)。でも、負けそうになったときには、さらにまた(問いを)具体的に突きつけられているということだと思うので。人間は思考を止めろと言われても、止めることができない生き物。だから、思考するように突き付けてくる具体的なものがあることは悪いことでもないかもしれない。ただ、もちろんそんなことを言っている余裕もない状況の方もたくさんいらっしゃるわけで……難しいですね。

 この作品は喜劇的な部分で楽しめる部分がとてもある作品であると同時に、先ほど言ったようなテーマが今、共有できるようなものだと思うんですね。これを劇場でお客様とご一緒に分かち合いたいという思いがあります。お客様と空間をご一緒したときに稽古場では気づかなかったところも気づける空気が生まれる。そんな劇場に期待しています。

◆公演情報◆
ワタナベエンターテインメントDiverse Theater
『物理学者たち』
2021年 9 月19日(日)~9月26日(日) 本多劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
作:フリードリヒ・デュレンマット
翻訳:山本佳樹
上演台本・演出:ノゾエ征爾
[出演]
草刈民代、温水洋一、入江雅人、中山祐一朗、坪倉由幸(我が家)、吉本菜穂子、瀬戸さおり、川上友里、竹口龍茶、花戸祐介、鈴木真之介、ノゾエ征爾

〈ノゾエ征爾プロフィル〉
脚本家、演出家、俳優。劇団「はえぎわ」主宰。青山学院大学在学中に演劇を始める。松尾スズキ氏のゼミを経て「はえぎわ」を始動。以降、全公演の作・演出を手がける。また外部公演の作・演出も数多く担う。2012年『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞受賞。はえぎわ新作公演「ベンバー・ノー その意味は?」11/3~14新宿シアタートップスにて上演予定。
公式ホームページ

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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