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人生の答えあわせ~40代から年齢を重ねて見えてきたfortune 槇村さとる 

「人生100年」時代。元気に、Happyにどう生きるか……

槇村さとる 漫画家

ネーム描きと家事をミルフィーユにして

拡大『新50代は悩み多きお年頃』から©槇村さとる」
 さて、そんな種探し、ネタだし、ネーム描きは、けっこうエネルギーを使う。脳は疲れ、心も消耗するので、私はネームと家事をミルフィーユにして、すすめる。15分とか20分とか、ネームに集中し、15分とか20分とか無心に家事をする。私にとって家事は「ただ対象に没頭する」極楽タイム。

 やればやるだけ部屋はきれい。ネームは進む。部屋はきれい。ネームは……(つづく……)。そうやって、どこを切ってもマインドフルネスなひとときをすごし、夕方飲むビールはこの上なくうまい。

 15分以上脳をいじめつづけない! 疲れる前に、やめる! 15分に一回自分をほめまくって細かく達成感を味わう! これが私が50年かけてあみ出したネームのつくり方⁉ (笑)

 ネームづくりの時の人気ナンバーワンの家事は台所みがき。特に流し回りをキラッキラにみがく時は気分も良い。自分の中へ深く入っていくネームのプロセスと、汚れを取ってステンレス本来の輝きをみがき出すという行為が似ていて、ノリが良いのかもしれない。

 そう書くと、槇村さんちは整理整頓されてキラッている……ように想像される方もおるかもしれないので言っとくけど、「流し」以外はいつもゴタゴタ状態です。

「千代ばあのようになるだろう、なりたいのだ」

 40代なかばから、流しみがきは始まった気がする。私は流しに向かう時(大ゲサ!)、必ずある人のことを想い出すのだ。その人の名は「織田千代」。「千代ばあ」……自分の作中に出てくるバーサンだ。『おいしい関係』というレストランを舞台にした、食べること、食べさせること、愛すること、愛されなかったこと……などにまつわるストーリー。少女の成長譚なのだが、そこに出てくる、食の世界の御意見番的な、いじわるバーサンが千代ばあだ。うまいものを食い、好きなように自分で決定して生き、他人に忖度(そんたく)せず空気は読まず、「和」をこわしまくり、暴力的で(ツエを振りまわしている)カッコイイバーサンだ。

 私はこのバーサンが大好きで、作中の事態が膠着(こうちゃく)すると、必ずこのバーサンを呼び出し、大暴れしてもらって若いモン(主人公たち)のオシリをたたいてもらう。千代ばあ、大好き。このストーリーの連載中はあまり自覚がなかったが、千代ばあは自動書記だった(話がオカルトチックになってますが、ついてきて下さい)。

 登場すればOK。あとは千代ばあが勝手に動き、しゃべり出し、暴れ、風のように去っていく。そんな描き心地だったのです。当時はとても不思議に思っていました。

 私はたびたび原稿上の千代ばあに向かって、「あなたはだれなの?」と問いかけていました。そして、うすうすはわかっていたような気がします。「いつか千代ばあのように私はなるのだろう、なりたいのだ。千代ばあはいつも私の中にいる、ウソをつかない丸出しの私なのだ」と。

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筆者

槇村さとる

槇村さとる(まきむら・さとる) 漫画家

1956年東京都生まれ。漫画家。’73年少女漫画誌「別冊マーガレット」において、『白い追憶』でデビュー。以後、『おいしい関係』『Real Clothes』『モーメント 永遠の一瞬』(以上、集英社)など数々のヒット作を発表。エッセイに『おとな養成所』(光文社)などがあり、多くの女性たちから支持されている。女性漫画誌を中心に執筆活動やエッセイ、対談など幅広く活動中。イラスト&エッセイ『新50代は悩み多きお年頃』(光文社)が好評発売中。発売たちまち増刷。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです