「演劇したーい!」、叫びがこだました
2021年09月17日
和歌山県での「紀の国わかやま総文2021 」で、2年ぶりにリアル開催された高校演劇の全国大会(8 月4〜6日)のレポート、後編です。舞台の上には高校生の切実な思いが表れていました。(前編はこちら)
北海道富良野高校演劇同好会、千葉県立松戸高校演劇部、徳島市立高校演劇部は、昨年高知県で開催される予定だった「こうち総文」に出場するはずだった各地域の代表校だった。そして、今年もまた、和歌山全国大会への出場権を勝ち取った。
通常の部活ができる状態であっても、連続して全国大会に出場するのは並大抵のことではない。それは、運などという生優しいものではなく、部活動を存続させる力、作品を作り続ける意志の勝利だと私は思っている。
高校演劇の魅力のすべてが加算され、積み上げられていく『ヤマンバ』は、クレジットされているキャストが35名。まさに足し算のパワー。同調圧力やSNSでの誹謗中傷に抗うヤマンバの生き方が、ロックの魂とともに炸裂した。
富良野高校演劇同好会『お楽しみは、いつからだ』(作:富良野高校演劇同好会)を選出した北海道ブロック大会は、映像での審査だった。私も審査に携わり、コロナ下の高校生活を描く上で、2020年4月の部活説明会という定点(コロナ騒動など夏までに終わるだろうと、多くの人がことの深刻さに気づいていなかった頃)を、コロナとの戦いがちっとも終わっていない「ナウ」から俯瞰するという設定の巧みさに膝を打った。しかも、前回の全国大会に選ばれながら上演中止の憂き目に合った富良野高校演劇同好会が、それを知らない状況をメタで演じる! 私は、その演劇愛に涙した。
ただ、私としては、コロナ社会を鋭くえぐる傑作を残すことより、自分たちらしくひたすら楽しく演じることを選択した富良野高校演劇同好会が愛おしかった。やっと、ついに、本当に、ウソじゃなく、全国大会の舞台に立ったよ! と、はしゃいでいるかのような彼らの演技を見て、もっとはしゃいでいいんだよ、それもまた演劇だよ、と、やはり、涙したのである。
最優秀賞に輝いたのは、クラーク記念国際高校(福岡県)『FLOAT』(作:クラーク記念国際高校演劇部)だった。
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